IT投資とは、ハードの価格のことではない。

 前のエントリでIT投資に対する経営者の意識調査の記事(調査がいい加減すぎて実のある情報はほとんどひきだせなかったが)をクリップした。

 それに対して、IT専門サイトには様々な問題点が指摘されている。そのうち、俺の考えに沿った記事をいくつかクリップ。

@IT情報マネジメント:中堅・中小企業のIT化課題を考える(1)

“何か”がおかしい
情報化の進め方(前編)
――中堅・中小企業のIT化課題を考える 第1
手段の目的化を防ぐ

 このように考えれば、上述の例におけるプロジェクトの目的は「売り上げの増加」であり、その方法・手段がCRMによる営業業務の革新であり、CRM情報システムの開発・導入は、そのために必要な要素・道具の1つだという位置付けが明確になるはずだ。何だかITの格下げのように感じられる方がおられるかもしれないが、これが本当の姿である。

DashiBlog: ITマネージャの叫び「なぜIT化は失敗するのか?」
 IT戦略の殆どがIT戦術になっている。何故、ERPという戦術が必要なのか?何故システムをWEB化するという戦術が必要なのか?と問い合わせると全体戦略あってのIT戦略が見えてくる。

 いくら目標を立てても、活用しても、そもそも企業全体の目的、目標=戦略と噛合っていなければIT化は成功しないと私は思う。

 IT化をする時に何故、ある戦術(ツール)を導入し、その戦術を採用をする事によってどれだけの利益が生まれ(コストが下がるか、売り上げが上がる)、その戦術を実行するのにいくらかかるのかまでを突き詰めて初めてIT化は進められるのだと私は思う。

 これらは至極当然な意見だ。情報部門の目標が「IP電話を導入する」とか「XXシステムの稼動」といっている時点でダメだ。重要なのは、トータルコストでみてペイするかどうかだ。リース切れのシステムで動いているものをわざわざ新しいシステムに乗せかえる必要があるのかどうか(しかも、単に置き換えるだけで何の付加価値もつけないで)で評価しなければ意味がない。

 ただ、もっと問題なのが、経営者がシステム化する目標すら持っていないケースだ。これはまた別の機会。

 ここまでは「IT投資」という言葉を特に断りも無く使ってきた。企業では主にコンピューター関連費用全般を漠然と指しているのではないか。それに対して鋭くメスを入れたエントリーがあった。

CNET Japan Blog – 江島健太郎 / Kenn’s Clairvoyance:インタンジブル・アセットのちから

講演で挙げられていた典型的な例として、仮に20億円のERP導入プロジェクトがあるとすれば、その内訳はハードウェア(サーバとストレージ)が1億円、ソフトウェア(ERPのライセンス)が3億円、実装(プロセスリエンジ、ERPのコンフィグ、テストなど)が9億円、デプロイ(ユーザーの運用トレーニング)が7億円となるという(数字は大幅に丸めた)。もちろん導入後にはこれらと別に運用コストが年々かかってくる。

 この比率は納得できる。社内に開発部門のある企業だと、人件費として捉えているために隠れてしまうが、間接的にしか生産に貢献しない情報部門。旧システムを延々とスクラップ・ビルドし続けるだけの情報システムなどはどんどんコストダウンしなければならないのに、気付く人は少ない。

CNET Japan Blog – 梅田望夫・英語で読むITトレンド:組織改革への投資の重要性と難しさ

しかしこういう実例を読むと、いくら「10:90」で「インタンジブル」な投資が重要ですよと言われたって、そしてよしんばそれが真実だと思えたとしても、「インタンジブル」な投資の中身を見ると何だか雲をつかむような話に思えて投資する気が萎えていってしまう、というのが企業の現場で起こっていることだということも、合わせて実感できるのではないだろうか。

 企業の現場というより、経営幹部の頭の中で起こっているんじゃないだろうか。情報部門がねだってくるのはハードの価格だけで、実際にはそれは氷山の一角でしかないことを理解している経営者は、少なくとも日本には、ほとんどいないだろう。見積の定価と割引率と現在のリース料との差しか見ない(理解できない)経営者ばかりなのが現実だ。

 まして、業務を効率化するために組織を含めて経営者自身の仕事の仕方を変えなければならないことを理解できる人間は今の日本企業にはほとんどいないのだろう。というより、自分が変われないから変えないのかもしれない。

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