権威・ブランド・思考停止・消費行動(1)

「daily UFJ総研」というfax情報紙が毎日会社に送られてくる。本来は、経営層向けへの経営情報提供のものだ。プレジデントとか日経マネジメントとかみたいなものと考えれば近い。

 UFJ銀行系シンクタンクなので、書いてあることは面白いことも多いし、もっともなことも多い。俺が勤めている会社では実現不可能な「べき論」が大半なので役にはたたない。それいぜんに、「XXな社員を活用することがこれからの企業にとって必要」と言われても、平社員にはどうしようもない。だから、普段は全く読まずに捨てている。

 たまたま手に取ったものに下のことが書いてあった。

daily UFJ総研 No3.228
「権威の原理」星野弘道(broadway_starlet@msn.com)
◆心理的「シナリオ」を作るために
 「強固なブランドを確立する」広告と「即座に売上をあげていく」販売促進の”両方を同時に”達成する、高度なコミュニケーション戦略を考えていく上では、見込み客の心の中で、どのような心理的な、”シナリオ”を展開させていくか、ということが問題になる。

◆抗し難い「権威」からの要求
私たちの社会には、権威からの要求に服従させるような強い圧力が存在する。正当な権威者に、
無意識のうちに従ってしまうこうした傾向は、そのような服従が正しいことであるという考えを、社会に属するメンバーに植え付けようとするのである。・・・権威者に対する服従は、一種の短絡的な意思決定として、思考することを中断させてしまうことから生じるのである。
そして、こうした「権威者に対する自動反応」は、権威者そのものの命令だけでなく、その権威の単なるシンボルに反応してしまう傾向がある。

◆権威を象徴する3つのシンボル

  • 肩書き
  • 服装
  • 装飾品
  • 番外:欧米人

 この文章はシリーズの途中なので、結論めいたものは何も示されない。内容も凡庸でマーケティング担当者なら知っていて当り前のことばかりだ。この程度のことすら知らないのが、日本企業の一般的経営層なのだろうか。

 それはともかく、企業や政府の目指すところが透けて見えるのが面白い。つまり、権威を守るために従順な消費者(行政サービスの購入者として考えれば国民は政府の消費者だ)を作ることを目指しているのだ。そして、権威者に服従する思考中断人間こそが彼らにとって都合の良い「消費者」なのだ。

 それを強化するためのツールが広告だ。だから、彼らはテレビを中心としたメディアをコントロールしようと躍起だ。同時に、ツールの信頼性が崩れることを恐れているのも彼らだ。これは、自分の存在価値を守ろうとするメディアの利害関係とも一致する。だから、視聴率不正操作やCMの中抜きややらせに過剰反応するのだろう。

 メディアの信頼性などというありもしない幻想を、そこに存在するかのように、守ろうとするるのはそのせいだろう。

 また、この「権威」とはブランドとも読み替えることが出来る。価値の評価が難しい場合、同等の別の商品との比較をすることによる判断は誰もが普段行っていることだ。それは、モノの選択枝が個人の選択能力を超えてしまっている現在の日本社会では必須の作業だ。

 そして、いい商品で生き残ってきた商標がブランドとして一人歩きしてしまっているのが現在の姿だ。今や品質・性能・機能は一部の消費財では全く意味を失った。時計やバッグなどは顕著だが、ブランド品の十分の一以下の価格で同等の性能・機能を持ったものが買える。もちろん、「ブランド品であるということ」は性能・機能に含まないとしてだが。メーカーは従順でモノを考えないフォロワーを作ることに躍起だ。当たれば、粗利益率は数倍に上がるからだ。
(続く)

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