GoProですら・・・

Image 面白い視点だ。これは、Apple watch の販売台数が iPhone のようにならないと予想したのと同じ理由だ。携帯電話は人口より大きな市場を持っている。自分でも、会社で渡されたガラケーと私有の iPhone を平行して使っている。このようなサラリーマンは珍しくなくなった。iPad を複数持ち歩く人間はいないだろう。

 アクションカメラの市場は個人の数よりはるかに小さい。記事にもある通り、出番が少ないからだ。一家に一台有れば十分だ。記事では指摘されていないが、この点でも iPad と事情が似ている。iPad をコンテンツプレーヤーとして使っている家庭ではリビングのテーブルに置きっぱなしにして家族間で共有しているケースが多いだろう。そのような使い方では定期的に買い換えることはしないだろう。

 さらに、アクションカメラはもっと使用頻度が低く、個人情報的な面倒さがないので、友人と共用も可能だ。一緒に行く場合ならグループで一台有ればいい。アクションカメラの出番になるような旅行やイベントの予定がそうそう重なることはないから、貸し借りの可能性も高い。毎週末にダイビングやスノーボードに行くようなヘビーユーザはそう多くないだろう。

 もう1つの要素として、デバイスの性能が一般ユーザが求める十分条件を満たしたということもある。4Kモニタが普及していない現在、4Kで動画を保存したいか?Full HDで十分だろう。というより、YouTube などの SNS に投稿して楽しむときにはHDですら重い。自分はSJ5000+では 840×400-60p にしてるし、NikonP330 でも 3264×2448(8M) だ。

 そう考えると、SONY のアクションカメラも先行きは厳しいだろう。新しもの好きのヲタク市場が飽和して、アクションカメラがコモディティとなったら、安価な競合品と残り少ない市場を奪い合うことになってしまう。

GoProblem―アクションカメラはタブレットと同じ道をたどるのか?|Techcrunch Japan

アクションカメラはタブレットに似ているのではないか? つまり多くの人々が欲しがるが、ただし1台だけだ。いつも最新モデルにアップデートし続けようというユーザーはごく少ない。

私の見るところ、GoProの深刻な状況も結局ここに行き着く。同社は今週発表したガイドラインで売上の落ち込みを予測し、従業員の7%をレイオフすることとなった(業績予測を下方修正してレイオフも示唆したGoPro、株価が23%の大幅下落 | TechCrunch Japan)。GoProが直面しているのは市場の飽和という問題だ。大勢の人々がGoProをすでに買っている。ただし1台だけで十分であり、さらにもう1台買うつもりはない。

大半のGoProはたぶん1年のうち11ヶ月は埃をかぶったままだろう。事実に直面する必要がある。われわれ一般ユーザーはエクストリーム・スポーツのマニアではない。なるほどたまの休みにスキーやサーフィン、ハイキングなどをする。GoProがそのもようを撮影できるなら1台欲しい。だが実のところどんなGoProでもいい。

解像度が最新、最高のものでなくてもビデオを楽しみ、友達を感心させ、休日を思い出すことができる。バッテリーが1日もたず、いいところでビデオが尻切れになるとしても、カメラのサイズが少しくらい大きくてポケットが膨らむとしてもわれわれはさして気にしない。

アクションカメラの機能はユニークで、他のガジェットでは代替できないことは確かだ。だからといって毎年最新モデルに買い換えるユーザーは少ないだろう。毎日いつもポケットに入っているスマートフォンとは違う。取り出してみせびらかすと効果があるようなステータス・シンボルというわけでもない。

ノートパソコンならわずかの改良でも作業が劇的にはかどり、生活が大いに快適になることもある。ノートパソコンは日常生活の基礎に位置づけられる重要なツールだからだ。ところがGoProの場合は中古品やお安いライバル製品で十分だ。

アクションカメラがタブレットに似ていると言ったのはそこだ。タブレットは映画を見たり本を読んだりゲームを楽しんだりするには好適だが、それには前の世代のiPadでも十分だ。私がそのiPadを買ったときそれは最新モデルだった。以後Appleは製品のアップデートを繰り返しているが、私はiPadを買い換えねばならないと思ったことはない。一方でスマートフォンの画面はモデルチェンジごとに大きくなった。こうした事情からタブレットの市場は頭打ちとなった。私はアクションカメラにも同じことが起こるのではないかと思っている。

なるほど世の中にはアドレナリンが出っぱなしの冒険フォトグラファーが存在する。こういうユーザーは常に最新、最高のアクションカメラを求めるだろう。GoProはまたドローンへの搭載や仮想現実の制作ツールの分野で優位性を獲得している。こういう市場は今後も大きな成長が見込まれる。

しかし今日(米国時間1/14)、GoProの株価は15%ダウンし、昨年と比べると77%程度に下がっている。株価を以前の水準に戻すためにはGoProには何か本質的に画期的な製品が必要だ。今のままではユーザーは古いGoProで十分満足しており、新しい製品を買う気にはならないだろう。GoProは「引出の奥に1台あることが分かっていればそれで十分」なのだ。

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