続 ヘッドアップディスプレイが事故を減らさないと思う理由

 ヘッドアップディスプレイを使って視線が前方に固定されてもハンズフリーが禁止されない限り携帯電話の使用による事故は減らないと書いた。更に、ヘッドアップディスプレイの効果に対する疑問をまとめたい。

 まず、ヘッドアップディスプレイの位置だ。ヘッドアップディスプレイはフロントグラスの内側(ドライバー側)に置かれる。つまり、ドライバーは運転中に1m程度の距離と外界とを視線は移動しないが、焦点をどちらかに合わせなければならないだろう。つまり、ディスプレイを見るときには外界への視力はほとんど期待できなくなるということだ。

 しつこいようだが、人間が集中して見ることのできる範囲はわずかだ。ヘッドアップディスプレイに視線を持って行って意識とピントをそちらに合わせたら、視界に入っていたとしても道路の端を走る自転車など見えていない。横断歩道にいる子供もだ。

 さらに、別の観点から、運転中に視線を集中するのは間違いだということを力説したい。横や後ろに注意を払うとが脳への刺激になる。人間の見ている視野は非常に狭いことを学んだ。そして、その視野以外の部分は脳が、それまでに見た情報から適当に組み立てていることも分かっている。人間は比較するものがなければ距離も大きさも判断することが不可能だ。距離感や相対的な面積などを常にフィードバックし空間を認識しなければならない。だから、一カ所に固定することは危険だと思う。これに関する実験棟が有ればお教えいただきたい。

 人間の生活速度が徒歩や自力での走る程度の速度域で生活している限りは、この方式が有効だった。昆虫や鳥のように広範囲を同時に見えなくても、脳内に作った世界像でやってこれた。それより、前方に二つ並んだ目によるステレオ映像による正確な遠近感把握によって細かい道具を作ることができたのかもしれない。周囲などは、常に見えてなくても困らなかったのだ。

 それが、馬、そして自動車を手に入れた人間は、従来方式の世界像認識能力しか持たないのに、自力では到底出せない速度で移動できるようになった。これが、現在の人間の注意力の限界を超えている事は明白だ。公道が破綻しないのは、これを前提にしたルールを作ったからだ。右側通行や左側通行というルールがあるから向こうからくる車がどっちに逃げるか考えずにいられる。このルールのない場所だと歩行時ですらぶつかりそうになるだろう。

 なお、航空機にはヘッドアップディスプレイが実用化されている。これは当然。パイロットは元々視覚情報に頼って飛んでいないからだ。

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