本:もうすぐ絶滅するという紙の書物について [Kindle版] 読了

20131103_book Amazon の日替わりセールで値引きされていたので勢いで買ってしまった。中身は全然知らなかったが、タイトルから「書籍は電子書籍になる」ことについての課題をどう克服するのかについて書いてあるのかと勝手に期待して買ったのが失敗だった。あとがきによると、原題を直訳すると「本から離れようったってそうはいかない」というものらしい。これが適切なタイトルだ。邦題の付け方が悪い。

 単に、博学な金持ちが知識と蔵書を自慢する対談だった。紙の本が好きだが、内容より本そのものを愛でるコレクターの心情を語り合った本と言える。だから、コンテンツを流通する媒体としての本ではなく、一品物の骨董品として本を見ている。当然、所有できない電子書籍は興味の対象ではない。電子書籍の悪いところを現在(ちょっと前だが)の技術の不十分さの批判でしかないところが残念だった。クライアントPCのOSやアプリケーションのバージョンやプリンタや記録メディアの非互換性なんて、この対談の頃から今までにかなり改善されたし、元々本質的な問題ではない。

 また、彼らにとってはコンテンツよりメディアそのものに執着があるので、同じ内容の書かれた本が再販されていたり、電子化されていても関係がない。なので、自分がこのブログでとりあげる紙本とは違う。内容が一緒ならそれが数百年前に出版されていようが、今年刷られていようが同一のメディアと考えるからだ。水を運ぶのにビンを使うのかペットボトルを使うのかの違いにしかすぎない。

 確かに、電子書籍(というかデジタルデータ)には表示用の装置が必要だという弱点がある。電気がなくなれば存在しないのと一緒だ。HDDや光学ディスクに残っていても読み取り装置がなければ無に帰す。

 歴史上の記録は石に刻まれたものも紙状のものに書かれたものも大半は消えた。消えて読めなくなった言語や文字もある。だが、物理的に残ったものは読まれる可能性を残している。しかし、電子的記録は現在の規格の電気を供給するインフラを失った時点で読めなくなる。そして、人類が絶滅した後、次に言語や文字をもつ文明にまで進化した種が発生した時に、石に残したものはひょっとしたら読解されるかもしれないが、HDDやプラスチック製のメディアに記録したものは可能性は低いだろう。数億年後の知的生命体は、エジプトのヒエログリフやバビロニアの楔形文字の文書を解読するかもしれないが、wikipedia を解読できないかもしれない。20世紀の数学や物理学の知識、そして現在の人類が滅んだ原因をその知的種に早い段階で継承できたら文明を維持し、太陽系終焉までに他の惑星に移住できるかもしれないが・・・

 どちらにしろ、完全に文化を維持できないまでに人類が何らかのダメージを受けた(自ら招くかもしれないが)としたら、紙の本が消えようが、インターネットが消えようが、それを使って文明を再興するすることは難しいだろう。

 もうすぐ絶滅するという紙の書物について

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