アベノミクスの正体:異次元緩和は空回り、日銀は政策変更を

 専門家の意見と称してマスコミに載っている意見でこの人とリチャード・クーという人との意見が一番自分の感覚にしっくり来る。マクロの経済学者の意見が底辺の市民の生活感覚に一致するのは素晴らしい。それに比べると、自民党政権の提灯持ちのマスコミや御用経済学者の根拠のない熱狂ほど腹立たしいものはない。

 橋下政権で3%から5%に消費税が上がった時にどうだったか、自民党政権や日銀は覚えてないんだろうか?消費税率アップで税収が増えるどころか景気後退で国債発行額は大幅に増えて未だにそれを引きずっているというのに。それと同じじゃないという根拠は一切示されていない。

異次元緩和は空回り、日銀は政策変更を (東洋経済オンライン) – Yahoo!ニュース BUSINESS
 日本銀行が4月に「異次元金融緩和」を開始してから、4カ月近く経った。ここでその効果を検証しておくことは有意義だろう。

 金融緩和の目的は、マネーストックを増加させることである。では、マネーストックは増加したか? 

 6月のマネーストックの対前年増加率は、M2で見ると3.76%、M3で見ると3.01%となった。これは、「マネーストックの伸び率が高まった」と報道された。

 確かに、これらの伸び率は、2009年以降で最高のものだ。しかし、09年9月、11年11月頃にも、マネーストックの伸び率は今回とあまり変わらぬ伸びを示した。それにもかかわらず、経済には格別の変化は生じなかったのである。

 また、季節調節済み前月比(年率)で見ると、6月はM2で6.1%増であるが、これは12年12月と同じ数字だ。M3では4.6%増だが、これは12年12月の4.4%増に比べて高いものではない。また、4、5月の数字は、M2で見てもM3で見ても、12年12月や13年2、3月の数字より低い。つまり、マネーストックが顕著に増えているとは言い難い。

 重要なのは、こうした伸び率の観察よりは、マネタリーベース増加との関係である。

 図に示すように、マネタリーベースの増加額は、4月以降急増した。これは、異次元金融緩和が導入され、日銀が民間の銀行から巨額の国債購入を始めたことの直接の結果である(日銀が国債を購入した代金は、金融機関が日銀に保有する当座預金に振り込まれる。当座預金はマネタリーベースの一種なので、マネタリーベースが増える)。

 問題は、マネーストックの増加額が、どの定義の指標で見ても、その月のマネタリーベースの増加額より、2兆~4兆円程度少ないことである。5月は、マネタリーベースが増加したにもかかわらず、マネーストックはほとんど変化しなかった。

【詳細画像または表】

■ 貸出は国債買い上げに ついていけない

 13年3月末から6月末までの増加額を見ると、マネタリーベースが28.8兆円、マネーストックが、M2で15.3兆円、M3で16.5兆円だ。同期間の増加率は、マネタリーベースが21.4%増、マネーストックが、M2で1.8%増、M3が1.4%増だ。マネタリーベースの増加率に比べて、マネーストックの増加率は無視しうるほど小さい。

 金融緩和に関する教科書的な説明だと、マネタリーベースが増加すると、信用創造メカニズムが生じ、マネタリーベース増加の数倍規模のマネーストック増加が起こるはずだ。

 以上で述べたのは、そのような効果が生じていないということだ。

 つまり、異次元金融緩和によって国債購入が拡大され、マネタリーベースの増加額は拡大したが、それ以上の効果はほとんど生じていない。いわば、マネタリーベースの増加が空回りしていることになる。

 ここでマネタリーベースとマネーストックの関係を復習しておこう。

 マネタリーベースとは、中央銀行と政府が民間銀行や企業、家計などに対して持つ負債であり、「日銀券発行高+貨幣流通高+日銀当座預金」からなる。4月4日に導入した金融政策で、日銀は、「マネタリーベースが、年間約60兆~70兆円に相当するペースで増加するよう金融調整を行う」とした。

 マネーストックとは、中央銀行を含む金融機関が、経済のそれ以外の部門に対して持つ負債であり、「現金通貨(日銀券発行高+貨幣流通高)+民間金融機関等に預けられた預金」からなる(通貨は金融機関や中央銀行が保有するものを除く)。どの範囲の預金をとるかで、M2やM3など、いくつかの定義がある。

 マネタリーベースとマネーストックの推移を銀行側から見れば、「国債を日銀に売却し、その分だけ日銀当座預金が増えるが、貸出は当座預金増加分ほど増えていない」ということだ。当座預金のうち過剰準備に相当する部分には付利(0.1%)があるが、国債利回りよりは低い。したがって、銀行の収益は悪化する。

 異次元緩和政策の目的は、「ポートフォリオ・リバランス」であるとされた。日銀の説明によると、日銀が買いオペを行うと、日銀当座預金が増加する一方、運用資産である国債等が減少する。したがって、金融機関は、ポートフォリオ全体としての収益性を維持するために、リスク性資産への投資や貸出等を積極化する、というのである。

 図のデータが示しているのは、日銀の意図に反して、ポートフォリオ・リバランス効果がほとんど生じていないということである。

 「リスク性資産」としては、株式、REIT、外国証券など、さまざまなものが考えられる。しかし、銀行にとっての最大の制約は、自己資本比率の維持だ。リスク性資産の保有を増やすことは、この制約に反する。したがって、国債に代わりうる資産は貸出なのだが、企業の資金需要がないために、急ピッチで進む日銀の国債買い上げに、貸出増がついていけないのである。

■ 金融緩和効果がないのは分かっていたこと

 実際のデータは、次のとおりだ。

 国内銀行の貸出金平均残高の推移を見ると、この数年ほぼ不変である。詳しく見ると若干の変動はあるが、対前月比で0.5%程度以内の変化でしかない。額で言えば、13年5月までの1年間の月間増加額平均は、9400億円程度だ。

 前述のように、マネーストック増加額がマネタリーベース増加額と等しくなるには、マネーストックは現在の2倍程度の率で増加しなければならない。しかし、それは至難の業だ。

 金融庁が行政指導で銀行の貸出増を指導しているようである。6月におけるマネーストックの増加は、そうした努力の成果なのかもしれない。しかし、市場の動向に逆らっての行政指導には、自ずから限度がある。

 マネタリーベースを増やしても、借り入れ需要がない経済では、マネーストックは増えない。つまり、「糸で引くことはできても、押すことはできない」。このことは、日本における量的緩和政策の結果として、はっきり分かっていたことだ。また、アメリカのQE(量的緩和策)の経験でも分かっていた。そのことは、本連載の第4回(12年12月8日号)で指摘したとおりである。そこで述べたとおりのことが起こっているわけだ。

 異次元金融緩和の実際の効果は、皮肉にも、金利を上昇させたことだ。これも、日銀の意図には反することだろう。しかし、インフレ率2%が実現した世界で名目金利が2%以下であるはずはないから、異次元緩和政策の直接の結果だ。言うまでもないが、長期金利の上昇は、経済にさまざまな悪影響をもたらす。

 また、円安で輸入物価が上昇しており、一部はいずれ消費者物価にも転嫁される。円安による物価上昇は、すでに政府が問題と認め、対策を始めた(飼料や漁船燃料の高騰に対する補助策)。他方で賃金は上昇しないから、実質所得が低下する。

 以上の問題については、この連載ですでに何度も述べた。日銀は、異次元緩和の結果が以上のようになっていることを認め、政策変更について検討を開始すべきである。

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