「プロって雑魚」「将棋の歴史に泥塗ったゴミ」 コンピューターに負けた棋士に酷すぎる中傷

 「将棋はチェスより難しいのでコンピュータがプロに勝てるようになるとは思えない」とチェスの世界チャンピオンがコンピュータに敗けた時に言われていた。しかし、その日がかなり近づいて来たようだ。論理的な正解があり、その組み合わせが膨大なために古いコンピュータでは勝てなかっただけなのかもしれない。

 自分は将棋の経験がないので分からないが、何手先までを読めるかは、プロの棋士であっても限界があるだろう。膨大な可能性を全て考慮することは時間的にも無理だろう。そこで、定石や過去の棋譜、経験などを総動員して考える範囲を狭めて考える種類を減らした上でその中からベストなものを探っているはずだ。コンピュータは過去の記録とその取り出しでは人間の能力を上回る。そして、考えうる可能性を総当りする記憶容量や速度を手にした。

 この図式は、人間の脳とコンピュータとの「知覚」や「認識」の特性をそのまま映しているようで興味深い。このことは、身近な仕事でも有る。遅れている企業の事務部門の業務効率化の鍵がここにある。以前は全てのデータを総当りして集計するようなことは出来なかった。なので、月次でやった結果を積み上げて年間を集計しなければならかった。いまなら、年間のデータを使って集計しても全く問題ない。それを前提にすれば、月次の業務の仕方も変えられる。資料にしても、1000件の足し算などはやるのも検算も大変なので、1ページ毎に小計をとって積み上げていた。今は数万件であっても無関係でむしろ小計とかページ計などは邪魔なだけだ。なのに、昔と同じ表をExcelで作ろうとする人がいてネックになる。

 この記事を引用したのはそのことだけではない。敗けた棋士を罵る心理について考えたかったから。「彼らはなぜ敗けた棋士を罵るのか?彼らは何と戦っているのか?」に興味を持ったから。罵っている人間は誰一人としてコンピュータに負けた棋士に勝てないのに。

 この心理は、人間vsコンピュータだけではなく、プロ野球の贔屓のチームが負けた時の反応と同じなのだろう。ファンは選手じゃないので一方的に応援しているだけだし、贔屓のチームが負けたからといって何の不利益もない。もし仮に、経済的な不利益が発生したとしても、賭けた人間の責任だ。八百長したのならともかく、ベストを尽くした結果負けたことについてプレーヤーは何の責任もない。避難する権利がファンにないのと同じだ。

 にも関わらず、こういう反応を示す人がいるのなぜだろう。おそらく、彼らは心理的に応援している側と一体感を持っているのだろうか。そう考えれば、勝ち負けに一喜一憂するのも分からなくはない。勝ったときに自分が勝ったわけではないのに優越感を感じられるのだろう。同様に負けた時には自分が負かされたような気分になり、今度はその責任をプレーヤーに押し付けてストレスの解消をするのではないだろうか。「勝ったときは一緒に喜ぶけど負けた時には自分は被害者になる」という身勝手極まりない態度だが、これがファン心理なのだろう。

 ただ、見世物系産業ではこのファンは欠かせない。大きな労力を払って球場に足を運んだり、テレビで将棋を観たりするのはこれらのファンだからだ。これらのファンの数は収入に直結する。ファンがつかない見世物が成立すら難しいのは多くのスポーツチームが撤退の危機に瀕していることからも明白だ。

 この、他人に感情移入するファンの心理についてはまた別の機会に書きたい。

「プロって雑魚」「将棋の歴史に泥塗ったゴミ」 コンピューターに負けた棋士に酷すぎる中傷 1/2 : J-CASTニュース

将棋のプロ棋士とコンピューターソフトが戦う「電王戦」が2013年3月30日に行われ、佐藤慎一四段(30)が将棋ソフト「ponanza(ポナンザ)」に敗れた。

現役の男性プロ棋士が公式戦でコンピューターに敗戦するのは初めてで、関係者や将棋ファンの間に衝撃が走った。あまりのショックのためか、佐藤四段のブログが荒らされる事態に発展してしまっている。

前日には「ロクな形勢判断できないコンピューター叩き潰す」

「電王戦」は13年3月23日から始まった5人のプロ棋士と5種の将棋ソフトが対局する5番勝負で、30日の対局は第2局だった。

中盤までは佐藤四段が優勢だったが、12年の世界コンピューター将棋選手権4位という実力のponanzaに終盤一気に攻め込まれ、対局開始から約10時間経過した20時過ぎ、141手でponanzaが勝利した。

佐藤四段は対局後「強いと思った」「最後も大きなミスをしてしまって…途中はやれるかなと思った局面もありましたが、負けたのは自分の実力なので仕方がないです」とかなり悔しそうに語っていた。

対局前日、ブログで「1週間ってほんと早かった。そして色々考えるにはたくさんの時間だった。ともすれば、否が応にも真っ暗な闇に包まれそうになったりした」と不安な心境をのぞかせていた。

最後には「プレッシャーがなんだとか、そんな逃げ道は俺は作らない。明日やることは決まってる。ロクな形勢判断もできないコンピューターを叩き潰せ、だ。応援してくれる人の為、自分の為に、絶対勝つ」と決意の文章で締めくくっていた。コメント欄には応援の声が数多く寄せられたが、中には「ロクな形勢判断もできない~」の部分について「まるで喧嘩のようで、冷静さを欠いた発言」「明らかに非礼」などという批判のコメントもあった。

「期待に応えることができなかった 震えが止められない」

結局佐藤四段が負けてしまった事で、「ロクな形勢判断もできないコンピューターに叩き潰されたわけです。自分がこう言われたら嫌でしょう?まずは自身の発言を反省してください」とのコメントが同じブログ記事に寄せられた。

その後も、応援と激励のコメントに混ざって「バーカ 惨めな敗戦さらしてんなよ まじプロって雑魚なんだなw30年間無駄な人生お疲れ様でした(笑)」「最悪です もう二度とプロを名乗らないで下さい 将棋ファンの願いです」「ただの売名目的でノコノコ出てくんじゃねーよ 将棋の長い歴史に泥を塗ったゴミ棋士」「26年もプロ棋士に拘った結果がこれ?早めに奨励会退会した方がマシな人生だったかもよ」などの中傷が大量に寄せられる事態となった。

佐藤四段は対局翌日の3月31日にブログを更新し、対局前日のブログに寄せられたコメントについて
「全て読ませて頂いたけれど 批判のコメント、当たり前だと思ってる。負けたときには覚悟してたし、自分が将棋ファンなら同じ気持ちかもしれない。これから頑張れ!って送ってくれた人もいて、感動した!って言ってくれる人もいて そんな風に思うなんておかしいよって 盤上には、臆病で弱気な自分が映ってたと思うのに そんな声をかけてくれる人たちの、期待に応えることができなかったから いつまでも震えが止められない」

と書き、弱気な内面をのぞかせた。

4月1日には自身の敗戦を分析するブログを更新。「時間を使わないで優勢の局面に到達できる力がなかった」「『勝つ為だけの準備』をしていた筈なのに、それを出すことができなかった」などと明かし、冷静な中にも悔しさをにじませた。

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