シュレディンガーの猫は元気か

シュレディンガーの猫は元気か―サイエンス・コラム175橋本淳一郎 ハヤカワ文庫

 nature とSCIENCE(日本のサイエンスとは別物)をネタに作者がコメントをつけたサイエンス・コラム集。これも、アシモフのものよりはマシだが、知識が少し古いのが残念。

  1. ミトコンドリア・イヴ説の根拠は疑わしい。サンプルが少なすぎるらしい。
  2. ミトコンドリア・イヴと言われた現代人類直接の祖先から現在までは6000世代でしかなく、アメーバーならたった数日で到達する。それほど人類の近似性は高い。「激しい攻撃性ゆえに、人類はただひとつの猿人として生き残ったのだという冷酷な事実」
  3. 最も巨大な生物は菌類
  4. 地球は決して優しくしてほしいなどとは思っていないのである。「人類が生き残るために、地球をどうするか」とストレートに言えばよい。
  5. 地磁気は一定のものではない。今は100年で5〜6度。1500万年前頃には一日で3度もずれた痕跡があった。
  6. 地球は現在間氷期であり、いつ氷河期になってもおかしくない
    1. ヒマラヤ山脈が氷河期を生んだ
    2. ヒマラヤ山脈が氷河期を生んだ2
    3. 海流説
    4. 温暖化説
  7. スーパーカミオカンデ計画始まる。予算総額はたった87億円。その託されている期待に比べればなんとも安いものだ。
  8. 地球のコアが熱いのは放射性崩壊の発熱。そのときに発生する放射能が自然界の放射能であり、生命の進化の原動力である突然変異はこれによる遺伝子の変化による。
  9. 人類が他の天体に住んでいる知的生物と出会えそうにない理由。知的生命が知的生命として活動していられる期間が短すぎて、知的生物が複数の天体で発生ていていても、それらが同時に知的生命体として活動していられる確率が低すぎるため。しかも、物理的な距離の制約もあるので、知的生命と出会う可能性はゼロと考えられる。
  10. モトローラが1994年に打ち上げを予定している通信衛星は、電波望遠鏡がとらえようとする水素原子の出す電波と一致してしまうので、通信衛星が望遠鏡の視野に入る時は衛星の周波数を変更することにした。
  11. 夜の空が暗い最大の原因は、宇宙の膨張ではなく、宇宙の年齢が有限であることによる。

 環境の問題とか他の天体の知的生物については、俺も前に書いたことがあった(はず)。

 面白いのは、本が書かれた後の環境変化。モトローラの通信衛星とはイリジウムだろうが、計画は実施された後消えてしまった。スーパーカミオガンデは完成後研究で成果を残している。

 540円とこのページ数の文庫としては割安なので、定価でも買いだろ。お買い上げはここで(^^;シュレディンガーの猫は元気か―サイエンス・コラム175

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