それは誤差の範囲ではないのか

 調査、というより調査の評価に対して突っ込むのを趣味としているが、CNNのこの報道には感心した。前にも、TidBITSのメンバーが購読者に行った調査結果について、何度も母集団の特殊性について注記していたことを思い出す。やっぱり、アメリカのジャーナリストのほうが日本の新聞記者より調査についての基礎知識はあるようだ。

6激戦州でブッシュ、ケリー両氏は互角 世論調査
:CNN.co.jp – USA

2004.11.01Web posted at: 12:15 JST

(CNN) CNNはUSAトゥデー紙、ギャラップ社との共同世論調査結果を31日、発表し、米大統領選の投票日直前に、勝敗を決する「激戦州」とされる6州で、共和党現職のブッシュ氏と民主党候補のケリー氏が、ほぼ完全に互角で並んでいると明らかにした。

ブッシュ氏とケリー氏のどちらに投票するか調べた今回調査は、選挙人数を多く抱えながら、趨勢が決まっていないとされるウィスコンシン、ミネソタ、アイオワ、ペンシルベニア、フロリダ、オハイオの各州で、それぞれ登録有権者約1300人(うち投票予定者は約1100人)を対象に、27~31日にかけて行った。統計上の誤差は±3%

 調査を公表する記事としては、統計誤差を書くべきだ。この記事だって、統計調査の前提条件全てを満たしているとはいわないが(サンプリング方法や有効回答率についての記述がない)、ニュース記事としては許せる範囲だろう。

 対比としてだめな調査、というより、結論先行型の調査。出したい結論が先にあって、それを補強するためだけに調査を行った例。

ITmediaモバイル:着うたフル「魅力を感じる」は3割強──C-NEWS

C-NEWSの調査によれば、回答者の約7割が「着うた」のダウンロード経験がないが、経験者の5割は着うたの内容に満足している。また、まもなく提供開始の「着うたフル」に魅力を感じているのは3割強。

 インフォプラントが運営するインターネットリサーチサイト「C-NEWS」は10月28日、携帯電話の着信音に関するアンケート調査の結果を発表した。

 同調査では、とくに「着うた」の利用動向や、KDDIのauが11月から提供開始予定の「着うたフル」(関連記事)に対する利用意欲をたずねた。調査対象は、ドコモ/au/ボーダフォンのインターネット接続機能が使える携帯電話を所有している15~39歳のインターネットユーザー300名。

 「着うた」のダウンロード経験に関しては、ほぼ7割が「ダウンロードしたことはない」と回答した。

 着うたダウンロード経験者のうち、着うたに「満足」または「まあまあ満足」とする人は5割で、その理由としては、「本人の声で流れるのでいい」「CDに近い音声だから」などが挙がった。一方、不満とした人の理由では「音が悪い」「料金が高い」が目立ったという。また、着うたでダウンロードしたことがきっかけで、その曲のCDなどを購入したことが「ある」人は4%だった。

 「着うたフル」に魅力を感じるかどうかをたずねたところ、魅力を「感じる」人が3割強だった。逆に、「感じない」人は5割弱で、「携帯で音楽を聞く必要性がない」などの理由を挙げている。

 「『着うたフル』に魅力を感じているユーザーがケータイユーザーの3割もいる」と思ってはいけない。

 まず、母集団。インターネットサイトで「携帯電話の着信音について」の調査に答えるようなアクティブユーザーがケータイユーザーを代表するサンプルではない。

 また、誤差についても言及がない。割単位で表現しているのでいいが、「着うたをダウンロードしたことのあるユーザー」という問いでは母集団はわずか90人しかいない。

 この調査からいえるのは、「着信音に関心の高いケータイユーザーの中ですら3割しかダウンロードしたことはなく、ダウンロード経験のある45人のうち半数は満足していなかった」ということだろう。もちろん、「ケータイ着信音の市場として有望なユーザー300名の調査によると、ダウンロード経験があるユーザーの半数は満足しており、全体の3割は『着うたフル』に魅力を感じている」とも書ける。

 実際には、もっと絞り込んで使うのだとは思うが。この調査会社のクライアントには錚々たる企業がならんでいて、暗い気持ちになる。こんな提灯持ちの調査会社を使ってるから日本の家電品はダメなんじゃないのか。

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