社内調査のウソ:解答編

 先日書いたエントリーの宿題(?)について、一件貴重な解答を頂いていた。ありがとうございます。

 解答編を書いたものの下書き状態のまま放置していた。説明が不十分で後出しジャンケンになっているところがありました。では、頂いた解答。

むー『社会調査のウソ』は読んだのですが、この問題は難しいですね。
結局、結論の是非についてははっきり断定できませんでした。
気になったのは以下の通りです。

1)会議の成果について全く触れられていない
2)会議で出た結論に対する事後検証が必要ではないか

開催された電子会議には「電子会議でできるから会議を行った」会議はなかったのか。
つまり出張してでも開催する必要がある会議を電子会議に置き換えられればコスト削減といえるが、そうでなければコスト削減ではない。ひょっとすると、手軽に会議ができるから、しなくてもよい会議を増やしコスト増になっているかもしれない。
また、Face to Faceでは良く意見を出すメンバーが消極的になっていたとしたらそれだけで損失。

3)もともと「電子会議」好きなメンバーしか参加していないとしたら好意的な意見しか集まらない。

4)60%という数字は妥当か

5)回数は正しくカウントされているか。
ここで言う「電子会議」がチャットのようなものならともかく、掲示板形式なら非同期コミュニケーションなわけで、回数とはどのようにカウントされているのだろうか。

6)参加メンバーが会議へ参加していることはどのように確認されているのだろうか。

7)ナニな中間管理職に、果たしてバイアスなしの正当な「聞き取り」ができるかどうか不安。
※番号はpanhead

1)については、俺の良く知っている会社の例として会議は会議のためのものであって、成果は求められないので、電子会議システムの効果の有無については関係が有りません。

2)これについても、結論は元々出ないのが通常なので、余り意味は有りません。ただし、説明で指摘されている「出張してでも開催する必要がある会議を電子会議に置き換えられればコスト削減といえるが、そうでなければコスト削減ではない。ひょっとすると、手軽に会議ができるから、しなくてもよい会議を増やしコスト増になっているかもしれない。」という指摘は正解。

3)正解。調査の母集団の選択の問題ですね。「XXを使っている人100人に聞きました」というのを良く見るがそれと同じ。

4)正解。会議の回数自体が水増しの可能性があるところに「少なめに見積もりました」といっても正しいコスト計算の基礎数字にはならない。

5)すみません。これはこちらの書き方のミスですね。電子会議とはパソコンを使わずにやるテレビ電話会議みたいな感じです。だから、記録さえちゃんとしてあれば(その会社ではこれすら怪しいんですが、それは別問題・・・)、カウントミスはないはずです。

6)正解。全く、参加者のあいまいな記憶のみを頼りにしてたようでした。

7)正解。「バイアス無し」は無理以前に、「部長から効果があったかどうか調べるようにと言われまして・・・」と、効果があるとする意見しか聞かないという姿勢でした。(さすがにナニなヤツです。)

「結局、結論の是非についてははっきり断定できませんでした。」は大正解。そう、この調査はコスト削減効果についての調査になっていないというのが結論でした。もちろん、さいもんさんは優を差し上げます。さいもんさんの常識を下回る会社ですみませんm(_ _)m

下に、さいもんさんの解答と重なっているとは思いますが、前に書いた解答編をそのまま載せておきます。

  1. 「調査せよ」ということは、「コスト効果があることを証明する資料を作れ」としかナニには聞こえていない。こんな前提でスタートした調査が正しい訳がない。
  2. 開催された遠隔会議の回数にどれだけの意味があるのか分からない。普及のためだけにたいした必要もないのに行われた会議があったはずだ。
  3. 企業の場合、年間サイクルで会議の繁閑がある。過去の同時期の会議の回数との比較が必要。
  4. ナニは電子会議を普及する普及活動を行っていた。こんな人間から「電子会議は便利ですか?」と聞かれたら否定的な意見を言うことは不可能(しかも、背後には総務部長がいて、コスト削減効果がなかったということは彼の顔をつぶすというこを意味する)。また、否定的な意見を持っている人間は調査自体を拒んだだろう。
  5. 調査の対象が電子会議使用者に限定しているので、否定的感触を持っていて使っていない人間については全く対象になっていない。
  6. コストの削減効果を判定するなら、このシステムを稼働させるためにかかったコストを調べなければならないが、それについて一切行っていない。システムを稼働するためには、ハードウェアやソフトの使用料を始め、インストールのために費やした人的・時間的・金額的コストもかかっている。一時的費用を短期間のランニングコストに上乗せするのは間違いだが、イニシャルコストとして平均期間(リース期間で割ればいいだろう)の固定費として上乗せする必要はある。そして、これらのコストと昨年度に使った出張費用と比べないとコスト削減効果があったのかなかったのかは判断できない。
  7. 結論について、は「この調査ではコスト削減効果があったかなかったを断定することは不可能」が正解。何せ、一切コストの比較対象がないのだから。

 こんなものが通ってしまうのが俺の良く知っている会社だ。一番の問題は、ナニに調査をさせたことだ。というより、「コスト削減効果があった」ということを証明するための調査など無意味だということを上級管理者が意識していないことだ。本当に調査する気なら別の部署にやらせないとダメ。

 それ以前に、このシステムを入れようと言い出したのが、情報部門で、そのための効果が予想されるという調査をでっち上げていた。この時点で十分な監査をしなきゃダメ。こういうものがまかり通って、不要なシステムを抱え込んでいるのが今の日本のITの現状だ。隠れコストはなあなあでごまかしてしまうのだ。

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