したたるものにつけられて

 小林恭二自選恐怖小説集。

 実は、古本屋で小林泰三と間違えて買ってしまったのだった。しかし、楽しめた。初めの方は、モチーフは面白いし、記述も上手いが俺の好みではなかった。中盤から時代物が入っていて、拾い物をしたと感じた。

 一つ気になった作品があった。それは、日本時間の夜9時か10時頃と思われる時間に何等かの天体が地球に衝突して規模から考えて全人類が滅亡してしまうと登場人物が思い込んでいる(そしてそれは全人類のコンセンサスとして受け入れられているらしい)日の午後に何人かの主人公がとる行動を独立的に描いている。

 それだけの規模の天体を1週間前まで発見できないなんて考えにくいのと、発見してから衝突までの時間が長ければ別の展開があるんじゃないかということは別の話として、気になる描写がいくつかあった。

 絶望した人々が暴徒と化したり、無秩序化した東京が修羅場と化したり、無法化したデパートで女性がブランド品に群がっていることなど、貧困な発想だと思う。

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