風力発電が一時期もてはやされた結果がこれだ。だいぶ前から言われていたことだ。他にも、振動や音で近くに住んでいる人に健康被害が出ているという話もあった。水力はダムの自然破壊や、ダム自体の寿命、川の生態系への影響、河口域の地形の変形といった問題を含んでいる。地熱や肝満潮による発電も原発をカバーできるレベルには程遠い。自然エネルギー移行を唱える人たちはこういう現実を分かっているんだろうか。
それとは別に、風力発電については総括が必要だろう。この記事では、風力発電の失敗が不可抗力だったかのような書き方だが、違う。建設時の想定が甘かったのだ。これは、本四架橋や赤字空港建設時に政治屋と建設屋と監督官庁の天下り先を確保したい官僚どもがやった希望的観測を織り込んだ通行量と同じだ。
ただし、これから電力発電コストが上がれば採算ベースに乗る可能性もある。産油国の都合や、円安といった外的要因で火力発電の採算性は左右される。今、1ドル80円を上回るような状態で産出した原油価格で計算した発電コストが10年間続くという保証は全くない。だから、風力発電の研究や実験を続けるべきだと思う。
その前に、「年間1800万kWhを発電する計画でしたが、昨年度までの4年間、毎年の発電量は計画のほぼ4割止まり。」という現実を見つめ、なぜこのような状態になったのかを究明すべきだ。おそらく 1800万kWh 発電できるという設定に無理があったのだろうが、機器の性能が期待したものではなかったのか、風が事前調査によって予想されたものを大きく下回ったのか、事故的状況があったのか、究明した上で実験を繰り返さずに採算の取れない風車をばら撒いても足を引っ張るだけだ。
赤字は年に5000万円
岐阜県恵那市の上矢作地区では、5年前、地区のおよそ9割に当たる750世帯が出資して民間企業と共に風力発電の会社を設立しました。
国から6億円余りの補助金を受けて13基の風車を建設し、年間1800万kWhを発電する計画でしたが、昨年度までの4年間、毎年の発電量は計画のほぼ4割止まり。
毎年5000万円程度の慢性的な赤字となっています。原因は弱い風
建設時の想定よりも弱い風しか吹かなかったことが原因で、今後も発電量が改善する見通しは立たないままだということです。
計画を中心となって進めた住民の1人は、「世の中に先駆けて自然エネルギーを利用しようと作ったが、風車が思うように回らず、大変残念だ。見通しが甘かった」と話しています。85%が計画下回る
全国には、自治体が国から補助金を受けて建設した風力発電所が、北海道から沖縄まで60か所にあります。
NHKは、これらの発電所の運転状況について調査を行い、このうち54か所から回答を得ました。
その結果、全体の85%に当たる46の発電所では、昨年度の発電量が計画を下回り、計画の3分の2に満たない発電所も半数に上りました。
さらに、全体の16%については、計画の3分の1に届いていませんでした。なぜ計画どおりにいかない?
なぜ、建設時の計画どおりに発電ができないのか。
その最も大きな原因は風量の不足です。
日本では、ヨーロッパの偏西風のように1年を通して安定した風が吹かないうえ、国土には山間地が多く、風車を建てられる場所も山の上などに限られています。
また、日本は落雷が多いほか、台風の通り道でもあるため、風車の羽が壊れる被害も相次いでいます。
自治体のおよそ半数は、海外メーカーが製造した風車を利用しているため、部品を取り替えるのにも長い時間がかかり、安定的な発電の妨げになっているといいます。相次ぐ故障や取り壊し
このため各地には、取り壊されたり、止まったままになったりしている風車もあります。
長崎県佐世保市の風車は落雷によって故障し、復旧には1億円近くかかるため、市は今年度末で撤去することを決めました。
沖縄県北谷町の風車は塩害による故障で止まったままで、島根県出雲市の風車も故障のため2基のうち1基が停止しています。各地で相次ぐ、回らない風車。
自然エネルギーの利用に詳しい岐阜大学工学研究科の安田孝志教授は、「風力発電は天候に大きく左右される不安定なものなので、安易に過大な期待を寄せるべきではない。地域ごとの課題を一つ一つ地道に乗り越えながら、導入に適した場所で普及させていくべきだ」と指摘しています。期待に応えられるか?
原発事故の影響で、自然エネルギーに対する関心が高まるなか、風力発電はとりわけ大きな期待を集めています。
今回、調査した自治体のもの以外に、第三セクターや民間会社が造った発電所もあり、国内全体の陸上の可能な場所に建設していけば、太陽光発電の2倍近い2億8000万キロワットを発電できる可能性があると国は試算しています。
次世代のエネルギーを期待だけで終わらせないため、綿密な調査と正確な想定に基づいた風力発電所の建設が求められています。