さよならロータス1-2-3 (Lotus1-2-3)

lotus-dos NEC PC98、MS-DOS、一太郎Lotus1-2-3 というのが日本の「パソコン」のスタンダードだった。その後 DOS/V によって PC98 アーキテクチャが過去のものとなり、Windows 95 以降の MS のプリインストール攻勢により Office (Word、Excel)が Lotus1-2-3 を葬り去った。

 軌跡については下の記事が詳しいが、Lotus も Excel に対抗すべく Lotus Improv というGUIベースの野心的な表計算ソフトを出していたことについては言及されていない。その GUI は当時最新版だった Excel for Mac よりもマウスオペレーションを強調したもので、その後の Excel に強く影響を与えた(MS が真似したかどうかは知らないが、時期的に Office の方が遅かった)。

 因みに、Office というと Windows の代名詞のように考える人が多いと思うが、Excel は Mac 版がスタートだったし、Word は Mac 版のワープロソフトに影響を受けたものだった。未だに、Excel と Word は UI が統一されないまま 2010 に至った。2013 が統一されたかどうかは使っていないので知らない。

 話を戻すと、「全世界累計500万本出荷からの転落」とあるが、恐らく累計ではこの数倍のインストールベースがあったと思われる。当時のパソコンユーザには「違法コピーしてはいけない」という感覚が薄かった。今の中国を笑えない状況だった。そして、「ハードが売れるなら」というメーカーや販売店のエゴ、違法コピー前提のソフトの価格付けもあって収束には10年以上かかった(未だにあるようだが)。今の中国を笑えない状態だったのだ。

 Office 系のソフトは互換性が全てといってもいい。業務で使うためには、社内や取引先と同じ物を使うことが重要なのだ。ここで重要なのは互換性ではない。データの互換性なんて Mac – Windows 間であっても保たれている。3.5 インチ 2HD の 9 セクターフォーマット FD
 が採用された時から互換性はあった(これをどれだけ使ったかわからないくらいだ)。しかし、問題はそうではない。相手の送ってきたデータを読めない時に、「おんなじソフト使ってるのに」といえることが重要なのだ。そのためには、Windows + Office でなければならなかったのだ。情弱しかいないような職場では特にそうだった(今でも、企業が windows を使っていることの多くはこれだ)。

 感慨深いが、LOTUS1-2-3 も一太郎もほとんど使ったことはない。横で、Mac II ci の Mac WORD や Excel 3.0e を使いながら、「あんなまっくろけな画面よく使えるなwww」と眺めていただけだ。ああ、テキストデータやCSVという概念のない人間から受け取ったデータを Mac で読めるようにテキストにするのに何回かつかった事はあった。

“さよならロータス1-2-3”…全世界累計500万本出荷からの転落 (日経トレンディネット) – Yahoo!ニュース
7月10日(水)10時42分配信

 日本IBMから発売されている「Lotus 1-2-3(ロータス1-2-3)」が、2013年6月11日で営業活動を終了。1年3カ月後の2014年9月30日にサポートを終了することが明らかにされた。

 対象となるのは、「IBM Lotus 1-2-3 Millennium Edition」「IBM Lotus SmartSuite」「Organizer」の3製品。年間継続サポート用のパーツに関しては、2013年9月11日まで販売するという。

販売自体は既にストップ…サポート期間はどうなる?

 ロータス1-2-3は、1983年の発売以来、ちょうど30年目の節目にその使命を終えることになった。

 日本IBMでは、今回のサポート終了の理由を、「米IBMコーポレーションのビジネス判断によるもの。ロータス1-2-3を含むSuper Office(スーパーオフィス)は、すでに開発を終了し、市場への販売も行っていない。また、稼動対象のデスクトップOSは、Windows XPが最後で、それ以降には対応していない」と説明。マイクロソフトのWindows XPは2014年4月でサポート期間を終了するが、その半年後にはロータス1-2-3もサポート期限を迎えることになる。

 IBMでは、同社ソフトウエア製品を対象にしたサポート体系として「パスポート・アドバンテージ」を設定している。これは原則として、製品の出荷日から最低5年を標準サポート期間とし、有料で3年間の拡張サポート期間を設けたもの。つまり合計で8年間がサポートを基本となっている。また、サポート期限の終了は4月、9月に統一されており、サポート終了日は12カ月前に告知している。

 今回のサポート終了に関する告知は2013年5月14日だったわけだが、サポート期間の終了はこのパスポート・アドバンテージにのっとることになる。

日本国内だけで、1986年から3年間で約25万本を出荷

 いまさらながら、ロータス1-2-3とは何か。

 これは、1993年に米国のミッチ・ケイバー氏が開発した表計算ソフトだ。

 のちにNotes/Dominoを投入するロータス社の代表的製品の1つで、表計算市場においては、米国で60%以上のシェアを誇ったヒット商品だ。ロータス社はロータス1-2-3により、ソフトウエアメーカーとしての地位を確固たるものとした。

 最大の特徴は、製品名の「1-2-3」に当てはまるように、表計算、データベース、グラフ作成の3つの機能を搭載しながら、当時最速と言われた計算能力を持っていたことだろう。さらにアドインソフトの充実によって幅広いニーズに対応。また、マルチプラットフォーム戦略にもいち早く着手し、MS-DOSやWindows、OS/2、UNIXなどにも幅広く対応していた。ただその中で、Windows対応には慎重で、ロータス1-2-3のWindows対応は、Windows 3.0まで待たなくてはならなかった。

 日本においては、1986年の日本法人設立にあわせて、日本語版を発売。当時、米ロータスのジム・マンジ会長は、「1984年から日本市場参入を検討した。かつて、私自身も日本の企業のコンサルタントとして働いていた経緯もあり、それが日本市場への参入に役立った」ともコメント。1-2-3を引っ提げて、万全の体制で日本上陸を果たしたことを明らかにしていた。

 ロータス1-2-3は、1986年の発売から3年間で、日本国内だけで約25万本を出荷。5年間では50万本以上の出荷実績を持ち、国内市場においても、表計算ソフトのベストセラーとなっていた。

 1991年には、当時、ワープロソフトで国内ナンバーワンシェアとなっていたジャストシステムの一太郎と、表計算ソフトで国内ナンバーワンであったロータス1-2-3をセットにした統合ソフト「Harmony」を、ジャストシステムとの共同開発で発売。当時、マイクロソフトが発売していた統合ソフトのワークスなどに対抗し、日本で受けていた統合ソフトブームのなかで存在感を発揮した。 

Windows時代突入で消滅へ…ロータス1-2-3の開発費用はなかった!?

 だが、そのロータス1-2-3も、Windows時代の到来とともにマイクロソフトが積極的なマーケティング施策を繰り返したこともあり、表計算ソフト市場を「Excel」が席巻する一方で市場シェアを減少。徐々に存在感が薄れてきた。このとき、マイクロソフトでは、「コンペチティブアップグレード」という手法を初めて採用。ロータス1-2-3のユーザーに対して、破格のキャンペーン価格でExcelを販売するという当時としては異例の移行戦略などを展開した。

 1995年にはIBMがロータスを買収し、その後はIBMがロータス1-2-3の開発、販売を継続。日本においては、2003年に、ソースネクストがIBMからOEMを受ける形で、1980円と破格でロータス1-2-3を販売。入門用表計算ソフトとして販売されるといった動きもあった。

 だが、IBMでは、Windows Vista対応のロータス1-2-3の開発は行わず、その後は消滅する方向へと進んでいった。IBMにとってはロータス買収の狙いはロータス1-2-3よりも、グループウエアの「Notes/Domino」の方だったともいえ、事業再編のなかで、ロータス1-2-3への開発投資が凍結されたという構図だ。

 なお、ロータス1-2-3の全世界累計出荷本数は500万本以上とされている。

 古くからのPCユーザーや、MS-DOS時代からビジネスシーンでPCを活用していたユーザーにとっては、ロータス1-2-3は懐かしい製品のひとつだろう。黄色いパッケージカラーが印象に残っている人も多いはずだ。PCの黎明期から成長期を支えたソフトウェアがひとつ消えた。

(文/大河原克行)

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