真似して潰れたら責任とれよ日経。「売上減でも、粗利率をグンと引き上げれば生き残れる」

 日経らしい見出しだ。「粗利益を上げれば売上が減っても利益は減らない」なんて小学生の算数だ。粗利益の高い価格を受け入れられるようにすることが重要だ。というか、それができないからみんな苦労しているのだ。この電器屋さんも今の粗利益を確保するために工夫している。記事ではそれが分かるようにはなっているが、この見出しのひどさのためにヤマグチの努力が貶められているようで気の毒だ。

 それはともかく、独自商品を扱っていない家電販売は価格競争になるのは自然な成り行きだ。従来のように価格情報を店側が独占している時代は終わった。今では、何百キロも離れた都市の通販ショップの最新価格を一般人が知っている。それは家電量販店の店員より詳しいほどだ。先日、息子が一人暮らしするので家電量販店に行って電灯を買った。部屋に電灯が無く、持ち帰りたかったのでネットで調べることもなく買った。しかし、電気ケトルの棚で値段を聴いて購入するのをやめた。以前自宅で使うために同じ物を Amazon から買っていたからだ。全く同じ製品に30%近く多く払う気はしない。しかも、その場でケトルを買ったら運ばなければならないが、Amazon なら息子の新居に運んでくれる。

 でんかのヤマグチは高付加価値のサービスを付けることで粗利益を確保したらしいが、粗利益を確保しても営業費用がかかっていないか?粗利益が上がっても販売費用がかかってはトータルではマイナスになりかねない。これも簡単な算数だ。他社が低い粗利益率で売っている商品を 35% の粗利益で売るにはかなり高い価格付けをしなければならない。それを受け入れられるような消費者が商圏内に、この店の存続を可能にする数いるということだ。地方では無理だし都心でも無理だろう。また、ネットで金額を調べて買うという消費パターンが普及すれば終わるビジネスモデルだ。

 また、粗利益率が高くても、人件費や家賃、電気代といった営業費用が嵩めば営業利益は下がる。高価格によって粗利益を確保するための手厚いサービスをするためには一台あたりの販売員の時間がかかるはずだ。全体の売上も、それだけ割高なものを選ぶ人の割合を考えれば、多くないはずだ。ということは、家賃や電気代などの固定的にかかる費用の一台あたりの負担額は増える。こういった費用をトータルで判断したうえで考えなければ、「粗利益は上がっても最終の利益はほとんどない」になってしまいかねない。

 今、でんかのヤマグチは営業利益があるかもしれないが、価格情報を自分で探し、家電品のセッティングなど自分でできる層の割合が増えれば、先細りするビジネスモデルだろう。もちろん、これは家電量販店にも当てはまるだろうが・・・

売上減でも、粗利率をグンと引き上げれば生き残れる:日経ビジネスオンライン

 価格は高いかもしれないけど、それだけしっかりサービスする――。これが「でんかのヤマグチ」の基本スタンスですが、創業当初からの方針ではありません。こうせざるを得ない事情があったのです。

 転機は1996年、大手家電量販店がヤマグチのある東京・町田に続々と進出してきたことです。

 当時のヤマグチは、価格でもサービスでも際立った特徴はない店でした。量販店と価格競争をしても勝てるはずがない。安売り競争に巻き込まれたら、ただでさえ少ない利益がさらに削られ、毎月の返済すら滞りかねません。そうなったら倒産へ一直線です。

 量販店の出店攻勢を受けても潰れないようにするためには、売り上げは下がったとしても、利益だけは死守しなければなりません。

 このときに、売り上げ重視から利益重視へ、「安売りから高売りへ」という大転換を図りました。もちろん悩みに悩んだ末の決断です。

 私にとって「高売り」とは、「粗利益を増やす」こととイコールでした。そこで、当時25%程度だった粗利益率を35%へと、10ポイント引き上げることに決めたのです。

 売り上げから仕入れ額を引いたのが粗利益額で、粗利益率は売上高に対する粗利益の割合のこと。粗利益率が高いほど「儲け上手」と言えます。

 私は、量販店が進出してきた影響で、ヤマグチの売り上げはかなり下がるだろうと思いました。5%や10%程度のダウンで収まるはずがない。明確な根拠があったわけではありませんが、これまで商売をしてきた経験から少なくとも3割は売り上げが落ちると読みました。

 売上高が仮に3割減ると、25%の粗利では赤字になり、とても持たない。でも、粗利益が35%だったら、売り上げが3割減っても赤字にはならず、前と同じくらいの営業利益が出せるのです。

 簡単な計算をしてみましょう。

 売上高10億円で粗利益率25%のとき、粗利益額は2億5000万円になります。販売費及び一般管理費(販管費)が2億円だと、営業利益は5000万円です。

 もし、10億円の売上高が3割減って、7億円になったとしましょう。粗利益率が25%のとき、粗利益額は1億7500万円。販管費が同じ2億円だと2500万円の赤字です。

 でも粗利益率が35%だったら、売上高7億円の場合、粗利益額は2億4500万円。販管費が同じ2億円ならば、営業利益は4500万円の黒字になります。

 つまり、売上高が3割落ちても、粗利益率を25%から35%へと10ポイント増やすことができれば、4500万円の営業利益を確保できるのです。

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