これからが本番/現実店舗の「ショールーム」化のリスクは家電以外のあらゆる量販店に及ぶ

perfectstorm 瀧口さんもご愛用のショールーム購買。アメリカで大規模な調査が行われてその結果がいくつかのニュースに取り上げられていた。 Amazon の品揃えが豊富になるに連れてこの動きが他の商品分野に広がっていることを伝えるのが下の記事だ。瀧口さんが書いていたことは取るに足らない戯言なので原本を読む必要はない(Newsweek が勘違いすると迷惑だろう)。

 これは、世界中で起こりつつある流通革命の次のフェーズだ。分業による交換経済が始まった時から数千年かけて発達した情報と物資の移動の発達による流通革命を簡単に振り返りたい。(経済の時間にまともに先生の話を聞いていなかった底辺学生上がりの素人考えなので、誤りがあれば遠慮なく訂正していただきたい。)

分業開始

 対人コミュニケーションと直接取引。生産者同士が直接財を交換し合った時代。移動範囲は限られるので、隣近所や徒歩で移動できる範囲内での交換。物流の専門家はいない。

貿易時代

 地点間の財を移動・交換する専門家の登場。数千年前から始まり今も続いている。主要な貿易方法の名前で大まかに分けてみる。これらは、基本的には同じものでしかない。物理的な流通方法が異なるだけだ。

隊商時代

 シルクロードを代表とする陸路貿易時代。物流を司るものは情報と物資の両方を独占した。海外の情報や産物のことは隊商や僧などから得るしかなかった。物品、情報共に異邦人からの伝言でしか得られなかった。
 国内の家電市場で言えば「町の電器屋さん時代」と似ている。新聞などで新製品の情報はあっても、自動車が普及する前の地方で購入するには近所の電器屋さんに行くしかなった。近所の電器屋さんは家電品のプロで知識も豊富な分化の最先端だった。物流と情報が一致したおおらかな時代だった。

大航海時代前期

 大洋航路発見による回路貿易時代。大型艦船による大量物資の輸送が可能になった。ここまでは、「情報=物流」の時代。
 最新の情報は特権階級が独占していた。ヨーロッパの民間人はアジア産の更新料の買付価格は知らなかった。日本の国内でも、江戸時代のような人の往来が自由でなかった時代にはこれと同じような形式の物流搾取者が財を成し、政府はこれに取り入ろうとしたり官製貿易にしようとしたりした。
 さらに、海外の情報収集が可能になり、地域間の市場価格の格差が明確になるとともに、機械文明の発達度合いの差が浮き彫りになり、それにつけこんだヨーロッパ諸国が植民地化を進める。

大航海時代後期

 電信という物流をリードする情報交換手段が発達し物流と情報の分業が起こる。ここからは、情報の流通による物流が発生する。今でも大物の大量消費財(自動車や食料、資材など)はこの時代。
 船の到着を待つことなく次の手が打てるようになった。その後航空機とトラック輸送による高速物流が生まれたが、基本は変わらない。
 ここで重要なのは、情報の流通と物流がわかれたということ。流通は主役ではなくなったこと。

 家電市場では「大型量販店時代」と似ている。大型量販店が情報力と資金力で個人商店を廃業に追いやった。情報が物流と分かれたことで、町の電器屋のおじさんの知識の価値は無くなってしまった。今でも、電器屋の店員に聞きたいことはほとんどない。

インターネット時代

 インターネットによる情報流通が普及し情報収集コストが歴史上最低になった。物理的な距離に関係なく情報収集や交換が可能になった。これによって起こっているのが今の購買だ。

 物流の速度が上がりコストが下がったので、通販で買うことのデメリットが大きく減った。そして、情報はインターネットで共有されているので、店員の知識にはほとんど価値がない。アメリカで Apple が発表した新製品の情報を一般消費者がリアルタイムで知っている時代なのだ。

 価格の情報もネットにある。商社が支社の情報を基に世界中で一番安く買える市場で買った物資を一番高く売れる市場に売って利ざやを稼ぐのと同じように、一般人が一番安く買い付けられるショップで買う。当然の経済活動だ。マナーとか「けちくさい」とかいう話ではない。企業の購買なら、交換可能な物を扱っている業者が複数あれば競争入札させるのは当然だ。公共事業ではそうしなければ批判を受ける。

 これまで、物理的・情報流通の制約から一般人が複数の小売業者間の価格を比較できなかったが、今はできる。そういう時代が来たのだ。

 量販店は泣き言を言う前にビジネスモデルを変えなければいけない。「他店より頑張ってますよ」とか言っててもダメだ。同じ物を扱っている通販ショップとの競争なのだ。実店舗のアドバンテージが有るならそれを納得できる形で提示して、その対価を求められるようにならない限り大型量販店は百貨店と同様、構造不況業種まっしぐらだろう。

現実店舗の「ショールーム」化のリスクは家電以外のあらゆる量販店に及ぶ―Pacedが詳細レポートを発表

Madrona Ventrue Groupが支援する位置情報分析を専門とするスタートアップ、Placedがいわゆる「ショールーム化」のトレンドが現実店舗に与える影響を詳細に分析したレポートを発表した。このレポートはショールーム化がeコマース企業、特にAmazonに与えるメリットも分析している。ちなみに、MadronaはAmazonに最初期に投資したことで知られている。

Placedの調査はショールーム化について過去最大かつもっとも詳細なものだ。ショールーム化というのは消費者が興味ある商品を手に取ってチェックするためだけに現実店舗に立ち寄り、購入はオンラインですませてしまうという傾向を指す用語だ。昨年、comScoreのU.S. Internetレポートは回答者の35%がショールーム化に相当する行動を取っていると認めた。またショールーム化の傾向は若い層ほど高く、 25-34歳では55%にも上っていた。

今日(米国時間2/27)発表されたPlacedの調査は、今年1月に全米の1万5000人の調査員から得た10億件のデータをベースにしている。comScoreのmobileLensのモニタ・パネルの方が規模は大きいがPlacedのコア・ビジネスは位置情報分析であり、その面で優位に立っている。Placedのモニタ・パネルからの情報や分析ツールはモバイル・アプリのデベロッパーがユーザーの現実世界での振る舞いを理解し、適切なターゲティングを行う上で大いに役立つだろう。

分析結果によれば、ショールーム化によってもっとも影響を受ける可能性がある企業のトップはWalmartとTargetだという。Amazonの顧客のうち、25.2%がWalmartを利用しており、10.7%がTargetを利用している。この順位を下に辿ると、Walgreensm、CVS、BestBuy、Home Depot、Lowe’s、Sam’s Club、Dollar Tree、Costco、GameStop、RiteAid、Kohl’s、PetSmart、RadioShackなどとなる。もちろんAmazonと顧客が重なってだけではショールーム化が進んでいるかどうかは分からない。この点について下で詳しく紹介する。

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