オンラインゲームで腕を磨いた、イスラエル国防軍のエース

 SFで描かれた未来が来た。ゲームセンターやオンラインゲームに傭兵のスカウトが現れるのも時間の問題だろう。

 彼らは、ミッションの度に呼び出されて缶詰にされ、どこの勢力のものか知らない戦闘機や迎撃機のコクピットに座り(物理的にはゲームコント-ローラーの前に座るだけだが)敵を打ち落とす。撃ち落とした敵機や爆撃した建物に人間がいることも知らずに攻撃をし、ミッションが完了したら報酬をもらって開放。

 そのうち、現在の戦争請負会社と同様に、オンライン傭兵部隊は多国籍化し国籍も主義主張も宗教をも超越する。そして、オンラインパイロットは知らないうちに自分が住んでいる国の首都をすら攻撃・・・

 なんて、ちょっと前のSFに描かれていそうだが、技術的には可能になった。

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KFAR GVIROL、イスラエル──同級生の多くがエリート戦闘部隊への入隊を目指して鍛錬を重ねるなかで、イダン・ヤウヤは「ウォークラフト(Warcraft)」──アゼロスという架空世界を舞台にプレイヤー同士が戦う、リアルタイムのストラテジーゲームの世界にはまり込んでいた。他の学生たちと違い、彼は学生時代の多くの時間をこのゲームとともに過ごした。

4年後、軍の訓練学校を卒業し、なんとかイスラエル国防軍の特殊作戦部隊に入隊した学生たちは、ガザ地区の郊外にある砂丘に配属され、同地区の監視とロケット弾迎撃の役目を与えられていた。22歳になったイダン・ヤウヤは第167防空隊(Active Air Defense Wing 167)に入り、イスラエルを防衛するアイアンドームの迎撃手として、多数のロケット弾を撃ち落とすという役割を任されていた。そして驚くべきことに、彼はロケット弾迎撃数の記録を作り、同軍のエースになっていた。

「ギーク」から「エース」まで、イダンに対する軍内部での評価はさまざまだ。しかし、かつてゲームのウォークラフトをしながら育ったイダンは、現実の戦争の最前線で高く評価される兵士になっている。彼はIDFきってのミサイル迎撃手である。

アイアンドームは移動型のミサイル防衛システムで、ガザ地区やレバノン南部からイスラエルに向けて発射されるロケットを撃墜するためのものだ。このシステムは、レーダーがロケット弾やミサイルによる攻撃を検知するとその着弾地点を計算し、市街地など危険なエリアであれば迎撃ミサイルを発射する。ハマスやヒズボラなどのグループが地対地ミサイルをかき集めるなか、アイアンドームはイスラエル軍にとってますます重要なものになりつつある。強力な火力や戦闘機など圧倒的な軍事力を誇るイスラエルだが、近年可能性が取り沙汰されているイラン核施設への攻撃がもし現実になるようなことがあれば、報復攻撃に対するアイアンドーム部隊の仕事はこの上なく忙しいものとなるだろう。

イスラエルとアラブ諸国の対立関係は60年以上前に遡る。そして両者の争いでは近年、ますます多くのハイテク兵器が利用されるようになっている。IDFの参謀本部諜報局の少将であるアヴィヴ・コチャヴィは今年2月、イスラエルに向けて発射されたロケット弾の数が累計で20万発に上ると話していた。ロケット弾からミサイル防衛システム、レーダー、無人航空機まで様々なテクノロジーが戦争に利用されるなか、イダン・ヤウヤのような兵士は各国の軍隊にとって大きな違いを生み出せる存在になっている。

コンピューターギーク、キーボードファイター、あるいは単に兵士……どんな呼び方でもいいが、イダンのような人物は最新鋭の軍事技術を利用する戦争において、新たな英雄になりつつある。

「スクリーン上にはレーダーの点滅や通知、画像など様々な情報が表示されます。戦略マップを見れば、どこから脅威が来るのかわかるでしょう。また、正しいターゲットに照準が合っているかは常に確認しなければなりません。多くの情報があり、短時間に判断を下す必要があります。こういったことはウォークラフトや他のオンラインストラテジーゲームと共通しています」(イダン)

「ギーク」から「エース」まで、イダンに対する軍内部での評価はさまざまだ。しかし、かつてゲームのウォークラフトをしながら育ったイダンは、現実の戦争の最前線で高く評価される兵士になっている。彼はIDFきってのミサイル迎撃手である。

アイアンドームは移動型のミサイル防衛システムで、ガザ地区やレバノン南部からイスラエルに向けて発射されるロケットを撃墜するためのものだ。このシステムは、レーダーがロケット弾やミサイルによる攻撃を検知するとその着弾地点を計算し、市街地など危険なエリアであれば迎撃ミサイルを発射する。ハマスやヒズボラなどのグループが地対地ミサイルをかき集めるなか、アイアンドームはイスラエル軍にとってますます重要なものになりつつある。強力な火力や戦闘機など圧倒的な軍事力を誇るイスラエルだが、近年可能性が取り沙汰されているイラン核施設への攻撃がもし現実になるようなことがあれば、報復攻撃に対するアイアンドーム部隊の仕事はこの上なく忙しいものとなるだろう。

イスラエルとアラブ諸国の対立関係は60年以上前に遡る。そして両者の争いでは近年、ますます多くのハイテク兵器が利用されるようになっている。IDFの参謀本部諜報局の少将であるアヴィヴ・コチャヴィは今年2月、イスラエルに向けて発射されたロケット弾の数が累計で20万発に上ると話していた。ロケット弾からミサイル防衛システム、レーダー、無人航空機まで様々なテクノロジーが戦争に利用されるなか、イダン・ヤウヤのような兵士は各国の軍隊にとって大きな違いを生み出せる存在になっている。

コンピューターギーク、キーボードファイター、あるいは単に兵士……どんな呼び方でもいいが、イダンのような人物は最新鋭の軍事技術を利用する戦争において、新たな英雄になりつつある。

「スクリーン上にはレーダーの点滅や通知、画像など様々な情報が表示されます。戦略マップを見れば、どこから脅威が来るのかわかるでしょう。また、正しいターゲットに照準が合っているかは常に確認しなければなりません。多くの情報があり、短時間に判断を下す必要があります。こういったことはウォークラフトや他のオンラインストラテジーゲームと共通しています」(イダン)

IDFはこのところ、防衛戦で結果を出しているアイアンドームをもっと多く配備しようとしており、そのための資金を引き出そうと米政府に交渉を続けている。ただし、イスラエル空軍防空隊で司令官を務めるズヴィカ・ハイモヴィッチ大佐は、これからの戦争ではテクノロジーよりも兵士の技術のほうがより重要になると考えている。

「われわれは、テクノロジーの使い方を知った上で、ときにはシステムの提示する案に反しても自ら決断ができるような兵士を必要としている。アイアンドーム隊にいるのはそんな兵士たちで、入隊前にPlayStationや他のコンピューターゲームをしたことがある者も多い。しかし、彼らがいま受けている訓練は、かなり複雑な弾道を予想するためのものだ。そのなかでは多くの情報から、より切迫した状況にあるターゲットを判断しなければならず、他のオンラインシステムとの通信方法も知る必要がある。さらに、多くの不確定情報にもとづいて瞬間的な判断を行うことには極度のストレスも伴う。IDFではいまや、ギークであることは恥じることでもネガティヴなことでもない。わが軍に選ばれる若者たちは、最新のテクノロジーに囲まれた環境で成長する必要がある」(ハイモヴィッチ氏)

そして、こういったことはイダン・ヤウヤのような人物がもっとも得意とすることだろう。

兵役義務も残り4カ月となったイダンだが、その後もIDFに残り、将来的には軍事学校で防空戦の指導者になるつもりだという。彼はシミュレーターを使って次世代の迎撃手を訓練することを望んでいる。言い換えれば、ウォークラフトの世界に戻ることを望んでいるということだ。

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