珈琲店タレーランの事件簿 また会えたなら、あなたの淹れた珈琲を (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)読了。

 正直ガッカリ。というか、読み始めてすぐに「こらアカン」と思ったが、もったいないので最後まで読んだ。正直苦痛だった。黒後家蜘蛛の会のような謎解きを読めるのかと思って勝手にハードルを上げてしまったのがいけなかった。そんなものを『このミス』に期待するのがアホだったらしい。

 謎が読めるとか読めない以前に文体が好みでなかった。登場人物の話し方も自分には不自然。これが一番キツかった。キャラクターも、作者が読者を謀るために曖昧に書いているのが見え隠れすることもあって、ぼやけていて全く魅力がない(特に主人公)。

 ミステリーへの批判で、「途中でわかった」というものがあるが、自分はそうは思わない。「これが後で面倒を起こすな」というのはすぐに分かったが、それが面白くなかった理由ではないと思う。終盤での無理矢理感は、あとがきに「ミステリー要素が少なかったので本として出版するのに際してミステリー要素を付け加えた(『このミス』選考委員)」とあったので、無理やり「事件」を盛り込んだのが原因かもしれない。

 小説としてのミステリーは謎解きだけが魅力ではない。謎解きしか面白く無いなら同じ作品を読み返すことなどない。面白いミステリーは何度でも読める。この作品はその域に達していないし、純粋な謎解きとして面白い題材でもなかった。恋愛ものと謎解きを組み合わせようとしたのが失敗の原因ではないだろうか。

 せっかく可愛いバリスタというキャラを思いついたのだから、黒後家蜘蛛の会のような展開も出来ただろうに。というか、バリスタや取り巻きが面白い人物なら、その他の設定なんか丸パクりでもいい。安楽椅子探偵なんてもう出来上がった様式美なんだから。その中で、魅力的な登場人物を描けるかどうかでいいだろう。

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Last-modified: 2013-01-28 (月) 15:21:44