さて、ダッシュウッドを中心として、このメドメナム僧院跡にあつまった遊蕩児たちのなかには、社会的な地位のある、錚々たるメンバーがいた。のちに英国政界の暴れん坊として恐れられ、一時はロンドン市長にまでなったジョン・ウィルクス、諷刺詩人で英国国教会の牧師であったチャールズ・チャーチル、同じく詩人のポール・ホワイトヘッド、のちに海相となった名代の道楽者サンドウィッチ伯爵、青年代議士トマス・ポッター、その他金持の貴族や、政治家や、文士、芸術家などである。彼らはそれぞれ僧院の修道士気どりで、院長役がダッシュウッド、執事がホワイトヘッド、副院長がサンドウィッチ伯爵であった。修道士はいずれも白い帽子に白い上衣に白いズボン、院長だけが、兎革で飾られた赤い縁なし帽を、これ見よがしにかぶっていた。 |