「地獄の火クラブ」が解散し、メドメナムの僧院に誰もあつまらなくなったのは、政治的理由のためという。正確なところは分らない。クラブが解散すると、ダッシュウッドはふたたび領地のバッキンガムシャー州にひきこもった。そして、巨大な黄金の円屋根のある城館を造営し、ここで昔日の栄光を再現しようと夢想したらしいのであるが、いかんせん、若いころの過度の放蕩が崇ってか、とみに健康おとろえ、宏壮な城館の内部にひとり閉じこもったまま、窓ごしに外の世界を眺めやりつつ、いたずらに時を過ごすのみの状態となった。酒も飲めず、牛乳入りポンスをちびちび飲むばかりだったというから、情けない晩年である。一七八一年、雄図むなしく、彼はここで死んだ。 |