UFJ経営情報クラプ2005.12・27 5・237 【中小企業こそ、トップ広報を実践せよ(3)】 計り知れない記事のご利益 山見インテグレーター株式会社 代表取締役山見博康 一つの企業記事が実際にメディアに載るま でには、多くの関門がある。まず、記者に時 間を割いて取材したいと思わせる情報を提供 し、労力をかけて原稿を幸いてもらわねばな らない。さらに、他にも多数ある原稿の中か ら、優先して取り上げられる必要がある。従 って、ようやく出た記事は報道価値を認めら れた「勲章」。どんなに小さくても、記事に は計り知れないご利益がある。 ◆社外への効果 記事として取り上げられれば、当然ながら 広範にわたって報せることができる。例えば、 日本経済新聞の発行部数は1日3百万部なの で、1部平均3人が読むとしても1日に9百 万人の目に触れることになる。テレビニュー スなどではもっと膨大な人の耳目に触れる。 それと同時に、他の多くの記者にも報され る。報道の客観的価値から、報道された企業 は他のメディアから見ると「取材候補企業」 になる。取り上げられたメディアに影響力が あればあるほど、その相乗効果は想像以上に 大きい。実は、記者の最大の情報源は他の報 道(記事)。メディアヘの露出が多い企業に、 取材申し込みが増えるのはそのためだ。つま り、メディアがメディアを増幅していくので ある。 また、好ましい報道は企業の付加価値を上 げ、セ−ルスにも好影響を及ぼし、売上増に つながる。もっとも大きな収穫は「信頼と信 用」の向上。それは「勲章」の威徳でもある。 企業のステイタスは一歩一歩着実に階段を 上っていく。情報公開に積極的な企業として、 社会の信頼性が増し、せ間の話題、評判にも なる。思いがけないビジネスに結びつくケー スも少なくない。顧客も取引先も、有名企業 との取引によって自らのプレスティージ(社 会的な威信)を高めたいものだ。よい報道が 重なれば、好意の目が急増するし、人々の心 を捉え始める。よいイメージが浸透していく と、次第にブランド化への道を辿る。「有名 ブランド」は万人に好まれる。特に、人材採 用面における好影響は予想以上に大きい. こうして、ステークホルダーのみならず、 社会の見る目をよい方向へと確実に牽引して いくのである。 ◆社内への効果 社内に対しても多大な効果がある。 成功している企業の多くは、そのビジョ ン・理念や経営方針を社員へ澤透させること に大いなる努力を払っている。全社一丸とな つて目標達成を目指すためだ。もしマスコミ に自社が取り上げられ、その中で日頃の訓話 の一端でも報道されれば、社員の理解が深ま りー人一人に浸透するだろう。 またメディアヘの登場は、自社の知名度を 向上させ、社員の自尊心を刺激する。他人に 見られていると意識し、「社会に認知され た」という自信が生まれ、誇らしい気持ちに もなる。そうして社員の心に、「社会的責任 への自覚」が醸成され、モチベーションの高 揚につながるのだ。 会社へのロイヤリティも昇華する。これは メディア効果の中でも最も重要な点の−つで あり、客観性・信頼性の成せる業として、他 の方法では得られない。営業では、記事によ りプレゼンテーションへの信頼性が増し、活 動に幅ができる。 このように−つの記事は、ビジネスチャン スを広げ、企業価値を高め、さらに社員のモ チベーションを向上させるなど、多様な可能 性をもっている。こうしたチャンスに結びつ けるため、企業トップは何をすべきか。次回 以降、具体的なノウハウをご紹介する。