UFJ経営情報クラブ2005・6・27 No.05−118
【営業プロセス管理のポイント(3)】
ITを活用した営業プロセス管理
 UFJ総合研究所 経営戦略部(東京) チーフコンサルタント 東條 恵明
◆なかなか整備・活用できない管理帳票
 これまで2回(2005.4.19No.05・073/2005・
5・24No.05・094)に渡って、営業現場におけ
るプロセス管理の重要性を述べてきた。が、
実際にプロセス管理をしようとすると、意外
に面倒なものである。
 売れた・売れないの結果集計だけなら、さ
ほど手間もかからなかったのに、いざ真面目
にプロセス管理に取り組もうとすると、少な
くとも、営業担当者ごと・顧客ごと・商品ご
とに個々の進捗状況を把握しなければならな
い。そのための管理帳票も必要である。
 しかし管理スタッフがたくさんいる大手企
業でさえ、このようなプロセス管理の帳票を
しっかり整備して上手に運用しているケ・ス
は、数えるほどしか見た経験がない。まして
や中小企業にとっては、管理帳票の整備その
ものが一苦労であろう。
 そうした問題もあり、「現状で可能な範囲
内」ということで、営業担当者に簡単な日報
を書かせるのだが、担当者によってどうして
も内容にバラツキが出るし、できない担当者
ほど「言い訳」や「感想文」になりがちである。
 そのような問題を解決する方法の−つとし
て、営業プロセス管理のソフトを活用するこ
とも−考である。
◆営業管理ソフトの例
 例えば、ソフトブレーン(株)が提供して
いる「e セールスマネージャー」という営業
支援ソフトは、行動計画や営業報告を文字で
入力するのではなく、選択肢から選べるよう
にできており、この選択肢は自社で自由に設
定できる。また、会社に戻ってからパソコン
で入力せずとも、外出先から携帯電話で直接、
報告することもできる。
 もちろん、選択肢から選ばせるためには、
事前に選択肢を作らなければならないので、
初期接触から契約(場合によってはアフター
フォロー)に至る営業プロセスを分解し、自
社の営業プロセスの基本形を定義しておかな
ければならない。
 しかし、この選択式の営業報告によって、
営業担当者のすベての活動とその成果が、数
字で集計・把握できるようになる。例えば、
初回訪問から契約までこぎ着けたのは、Aさ
んは○%でB さんは○%、B さんの成果が
芳しくないのは××の段階に問題がありそう
だ、といった具合である。
 効率の良い営業方法の発見、営業ノウハウ
や顧客情報の共有化など、紙の管理帳票では
実現しづらいことが、ソフトの活用で容易に
なる。ちなみに同社のソフトは、ライセンス
を買い取らなければ利用できなかったが、昨
年から、営業担当者数に応じて月額使用料を
支払う形式のサービス(営業担当者が20名
以下の中小企業向け)も提供されている。
◆プロセス管理の目的を見失わない
 営業担当者が外出先で何をしているのか把
握できていない。社長や営業部長の知らない
ところで失注やクレームが発生する。営業会
議は結果の報告と叱咤激励に終始している。
こうした問題が生じる理由の多くは、営業プ
ロセスが見えていないからである。
 しかし、ITでプロセスの“見える化”を
図るだけで、黙っていても情報やノウハウの
共有化が進み、組織的な営業活動に結びつく
訳ではない。
 プロセス管理の目的は、決して営業担当者
の一挙手一投足を束縛するためのものではな
く、営業担当者それぞれに自分の活動を客観
的に振り返る機会を与え、他人や他部門と比
較することで創意工夫の余地を生み出すこと
にある。そして、弱い部分を上司が支援し、
成果に結びつけてあげることこそがプロセス
管理の真の目的なのである。
#ls2(UFJ総研)

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