「日米のタブレット利用傾向にこんな違いが――電通総研調査 – 電子書籍情報が満載! eBook USER」で、日米のモバイル端末によるコンテンツ購買動向について調査結果について噛み付いた。精度は低そうだが、少なくとも日本のユーザがコンテンツ購入をする割合が少ないことは分かる(それがユーザの購買傾向なのか環境の影響なのかはこの調査からは分からない)。
個人的には、日本のダウンロード販売コンテンツの環境の未成熟が原因だと考えている。何しろ、液晶パネルで本を読むのが大好きで、Zaurus を使っていた頃(10年以上前)から青空文庫を読んでいたほどの自分が iPhone や iPad で日本語のデジタルコンテンツをほとんど読んでいないことから分かる。
第一にタイトルだ。これは言うまでもない。紙媒体の印刷業者と流通業者と一体になったコンテンツ隣接権利団体の既得権益を守るためロビー活動が原因だ。作家までもがこれに賛同するというのは実に残念だが、また別の機会に。
Newsstand というアイコンが iOS 5 で導入された。iPhone 4S にも iPad にも入っていて、3GS にも自動的に入った。試しに App Store をクリックしてみると、書店やコンビニに並んでいるような雑誌の名前が並んでいる。しかも無料だ。「なかなかやる」と思いながらタイトルの詳細説明を読んでみたら、無料なのはビュワーアプリだけでコンテンツは定期購読だった。
問題はリストの「無料」という表記だ。月額いくらか書いておくのが筋だろう。仮に無料のものがあっても(おそらく無いが)、今のリストで見つけるためにはひとつひとつ詳細説明ページを開いてチェックしなければならない。
商習慣の違いから
さらに問題なのは、コンテンツそのものだ。紙版への配慮のせいか、どのタイトルも高い。紙とほとんど変わらない。紙や印刷費用、流通コストがかからないのにこの値段というのは納得できない。電子版にするコストも掛かるだろうし、サーバの維持管理にも費用はかかるから、紙や印刷費用、流通コスト全て分を引けとは言わないが、それにしても割引率が低すぎる。書店を通さないというだけで、中継ぎと書店の取り分、返品コストが出版社の取り分になる。これは、電子版にするコストより大幅に少ないだろう。そして、電子版において電子版化するコストは固定費だ。流通経費とは全く性格が異なる費用だ。安くてもたくさん売れば充分取り戻せる。というより、たくさん売ることが重要なのだ。にも関わらず、一冊あたりの売上を前提に価格を決めて暴利を貪ろうとしているように映る。これに反感を覚える。雑誌社としては、既存の紙媒体の流通業者への配慮から値段を下げたくても下げられないのかもしれないが、このような価格付けはコンテンツの価値についての納得性を失うことになる。
また、日本の場合、従来から流通業者への配慮からだろうが、通販による雑誌の定期購読が盛んではなかった。雑誌の定期購読というと、企業向けのビジネス雑誌や専門誌がほとんどで、書店で扱っているような一般雑誌はあまりなかった。しかも、あっても、書店で買う価格より送料分が値引きされている程度だったり、価格は同一で送料分割増になっているものまであった。Lifeとか今はなきリーダースダイジェスト日本語版(本国版は健在)などは、3年契約すると単発で買う時の半額程度の価格になったのにだ。この価格体系は Newsstand にも引き継がれているために、英語版の価格体系を見てしまうと、日本語タイトルの割高さが際立ってしまう。
Apple が本気で Newsstand を普及させたいなら、無料の定期更新の雑誌をここに入れるべきだ。内容的にはちょっとしたコラムと広告、新製品や周辺機器の紹介といった程度の小冊子でいいのだ。今からでも遅くないので作成していただきたい。