元の実験結果とこの記事はかなり印象が違う。この記事では「同時に複数のデバイスを使うことが脳に悪影響を及ぼしている」ように読めるが、研究結果はそんなことを調べてはいない。
この記事ではデジタルデバイスの並行使用について調べたかのようなタイトルが付いているが、調査はメディア全般について調べられていて、紙媒体やテレビ、音声電話なども含まれている。メディアを同時に長時間使っていればスコアは高くなる。それが、「音楽を聴きながら本を読む」とか「テレビを観ながら新聞を読む」であってもだ(自分が読み違えて無ければだが)。これらを「PC・スマホ・タブレットの同時使用」と考える人はいないだろう。
また研究は、記事にもある通り、アンケート調査とfMRIを使った脳構造の検査しか行っていない。なので、「低下させる」ということは言えない。元の調査には書いていない(ように自分には読めた)。そして、この調査では因果関係は分からない。この記事を書いた人間は相関と因果関係の違いが分かっていない。というか、因果関係があるかのように書いたほうが読者の関心を呼べると思って、歪曲して書いたとしか思えない。
このグラフが正しいとしても、このグラフからは「PCやスマートフォンなどの複数のハードウェアを同時に使う「マルチ端末同時利用」をよくする人の脳を調べた研究から脳機能が低下しているという事実が明らかにされ」ない。他のストレス要因について考慮していないからだ。
長時間労働により自由にできる時間が少ないために同時にメディアを使う時間が長いことは「脳の認知機能や社会的感情の悪化」をもたらすだろう。そんな生活環境なら人間関係にも問題を含んでいる可能性が高く、ストレスも大きい。
どちらが先かは結論づけられない。家庭生活にストレスを抱えて仕事に打ち込む人もいるだろうし、長時間労働により夫婦関係が悪化した人もいるし「ネット依存症とパチンコ依存症 ~プチネット断食のススメ[5]|三谷流構造的やわらか発想法|ダイヤモンド・オンライン」に挙げられるような依存症かもしれない。デジタルデバイスに限らず、メディアに依存しているような人が示す症状は「認知機能や社会的感情の悪化」と一致しているのではないか。
PC・スマホ・タブレットなどを同時に使い分けるマルチタスクは脳の認知機能を低下させるおそれ – GIGAZINE
複数の作業を同時に行う「マルチタスク」は忙しい現代人にとって避けられないことですが、作業効率の低下だけでなくストレスの増加や脳機能への悪影響といった心身への負担が近年、指摘されています。そんな中、PCやスマートフォンなどの複数のハードウェアを同時に使う「マルチ端末同時利用」をよくする人の脳を調べた研究から脳機能が低下しているという事実が明らかにされました。
Higher Media Multi-Tasking Activity Is Associated with Smaller Gray-Matter Density in the Anterior Cingulate Cortex
(PDFファイル)http://sro.sussex.ac.uk/50361/1/KanaiPone.pdf
News : News and events : University of Sussex
http://www.sussex.ac.uk/newsandevents/?id=26540
続きを読む 歪曲記事:PC・スマホ・タブレットなどを同時に使い分けるマルチタスクは脳の認知機能を低下させるおそれ