風疹:ワクチンで築く防波堤

 流行する感染症には特徴がある。参考「錯覚の科学

  1. 発祥までの時間が長い
  2. 感染してから発祥までの期間も感染源として菌をばらまける
  3. 感染力が強い。飛沫感染等で拡散できる
  4. ワクチンがない
  5. 統計的事実より顔の見える個人の経験談を真実と感じてしまうという人間の心理

 効果的なワクチンがあるにもかかわらず、2018年の日本で麻疹(はしか)と風疹、インフルエンザが日本で流行する原因としては

  1. 発症後の致死率が低い:罹ったら高い確率で死ぬような病気ならワクチンの接種率は上がるはずだろう
  2. ワクチンに対する不信感を持っている人間の数が多い:自分でなんにも考えないけど、一言社会に物申したい wired とかに書いてある記事の見出しに影響を受けるような意識高い系
  3. マスコミによるワクチン副作用の過大報道:副作用があることは事実なので、その補償は社会が行うべきで、それが見捨てられているなら、その矛盾を報道で知らしめることは重要。問題なのは、ワクチン接種がなかったらもっと大きな被害があることとのバランスが取れていないこと

 さらに、ワクチンが発達した現代社会でもこういった病気が流行る理由として、

  1. 移動手段の発達
  2. 人工の密集

 が考えられる。今年2018年春先に沖縄で発症例が確認されたはしかが、東京、大阪、名古屋に飛び火した。これなどは典型例だ。数百年前だったら沖縄で流行ったとしても、簡単に本土には来なかっただろうし、きたとしても九州経由だっただろう。今は、東京や大阪などのハブに到達したら次が札幌になるか北九州になるか誰も予想できない。

 後、日本独特の習慣で、ゴールデンウィーク、盆と正月という全国的に移動が盛んになる集中期間がある。人口シャッフルの際にハブとなるエリアで広い範囲の人が同席する。下の記事の夏休みもそうだ。発症前の北陸出身の感染者が東京駅でゴホゴホやる。右隣りに座っている人がそれを京都に持ち帰る。左隣に座っている人は仙台に帰る。京都や仙台から出てない人へと2次感染、3次感線が広がる・・・数日寝込むだけで治る人は多いだろう。しかし、妊婦さんが罹ったら・・・

 この鎖を断ち切れるのがワクチン接種を受けた人だ。東京駅でゴホゴホしている人の隣の京都に帰る人がワクチン接種をしていたら京都に持ち帰ることがなかったのに・・・(全て架空の話)

 これはパンデミックというボードゲームをやってみれば分かるはずだ(自分はやったこと無いが、ボードゲームおっぱいとペガの屋根裏部屋で聞いた)。ゲームルールを見た限りでは、航空機時代の調整が必要だろう。実際にはニューヨーク、ロンドン、パリ、東京などは隣と考えなければならないだろう。

 もちろん、麻疹や風疹に関しては海外は隣じゃない。なぜなら諸外国はワクチン接種が義務化されているから。東京で流行ってもそう簡単にニューヨークで流行はしない。ワクチン接種できない人や、しても効力を発揮しない人が少数いるので発症する人が出てくる可能性はあるが、日本のようには広まらない。アメリカでも麻疹のワクチン接種率が下がって流行の確率は上がっているらしいが。

風疹患者、1週間で倍増 夏休みで関東から全国へ拡大か(朝日新聞デジタル) – Yahoo!ニュース

国立感染症研究所は4日、直近1週間(8月20~26日)の風疹の患者数を発表した。前週の約2倍の84人に上った。流行の兆しがある関東以外でも患者が出始め、新たに3県から感染報告があった。

 感染研によると、今年に入ってからの患者数は273人。昨年1年間の約3倍に上る。累計患者数は千葉84人や東京72人、神奈川24人など関東地方が多い。新たに山形や栃木、和歌山でも患者が出て、今年に入って感染報告があった自治体は27都道府県に上った。感染経路は不明だが、夏休みで都市部と地方で人の行き来が増え、感染が広がったとみられる。

 風疹はウイルス性の感染症で、くしゃみやせきなどのしぶきでうつる。潜伏期間は2~3週間。発疹がでる1週間前から、人に感染する。症状が軽い場合は患者本人も風疹と気付かないまま、感染を広げてしまうことが少なくない。

 妊娠初期の妊婦が感染すると、赤ちゃんに障害が出る恐れがある。1万6千人超の患者が出た2012~13年の流行では、45人の赤ちゃんに障害が出て、うち11人が亡くなった。

 感染症に詳しい、岡部信彦・川崎市健康安全研究所長は「赤ちゃんの命と健康のためにも、妊娠前の女性や、妊婦の夫、職場の同僚といった人は、ワクチンの接種を検討してほしい」と話す。(水戸部六美)

UI デザイナーの勝利または物忘れ対策の難しさ

 素晴らしい。iOS7以降から始まったマテリアルデザインだったかの流れは止まらず、色んな所にまで波及している。しかし、使い方を間違えるとコンビニコーヒーと同じ結果になる(それ以前から Windows 8 や Android がやっていたことは知っている。ただ、それが一気に社会に広まるきっかけは iOS という意味)。

 ほんとに素晴らしい。重要なのは視覚情報を小奇麗にしたってでかくしたってダメということは重要。

 個人の家の鍵とか財布とかもこの手が使えるかもしれない。ただし、一人暮らし限定だが。

UFOの目撃数が減っているらしい

情報源: 写真や動画をすぐ撮れる時代なのに、UFOの目撃数が減っているのはナゼ? | ギズモード・ジャパン

日清食品 焼きそばUFO
食べる前にはキャベバンバン
 面白い記事だ。目撃数が減っている原因としてはいくつも可能性がある。UFOの飛来数が減ったとすればいいが、もともと存在しないものが増減するはずはない。

 目撃証言が減った理由は主に心理的要因だろう。記事にも書かれているように、何かを見たときにUFOと結びつける人が減ったという可能性はある。同じ現象を見た(実際に何かの現象によって発生した光が網膜に届いたという意味)ときに、「これは光が雲に反射してるだけだ」という知識が普及したということだ。それを陰謀論に結びつける人もいるようだが。

 それより自分が興味をもつのは、なぜ昔は有りもしないUFOを見たという人がいっぱいいたかという点だ。それは心霊現象にも通じる。最近読んだ「感じる科学」で、「だれもが見えてないものが見える」というのは脳の勘違いと切り捨てていた。

 この辺は「なぜ人は幽霊が見えるのか」が詳しいのでぜひお読みください。

 そもそも、500年前にUFOを見たという人はいなかったはずだ。UFOという概念が存在しなかったから。これがヒントだ。つまり、人はものを見てそれが何なのかを判断するときに経験(知識)を用いるということだ。さらに言えば、知識が見えるものを決定するとも言える。「XXが見えた」のではなく「脳の中のストックにあるXXに近いものが見えた」のにすぎない。

 昔のスーパーマンのオープニングは「あれは何だ」「鳥よ」「円盤だ」「スーパーマンだ」だった。自分が幼い頃(45年くらい前)にはUFOという名詞はまだ広まっておらず、空飛ぶ円盤と言っていたからだ。「空飛ぶ円盤」から「UFO(ユーエフオー)」になって「UFO(ユーフォー)」になっていった。だから、昭和40年頃では円盤の目撃は有ってもユーフォーの目撃はなかった。

 何かわからないものを見たときに、それを表現する適当な単語が見当たらないときに、(脳の)引き出しにある近い概念の言葉を使う。UFOは2016年のアメリカ市民の心の引き出しの順位が下がったということだろう。それが、科学知識による知見なのか、もっと胡散臭い陰謀論なのかはわからないが。

フィードバック回路・脳内の繋ぎ変え

 「脳の中の幽霊」で幻肢について語られていた。そこで、失った器官(腕や足)の感覚を受け持っていた脳の部位に隣接する部位の神経が伸びて、他の器官から来る信号を失った器官からの信号と錯覚して痛みやかゆみを感じることがあることを知った。そして、その治療として脳を納得させる(本ではこの表現は使ってないが)のが効果的と有った。

 このツイートで書かれていることはその延長上のように思える。

 脳は常に感覚器官からのフィードバックで存在を確認しているのだろう。だから、フィードバックをすり替えて(上のツイートなら神経を繋ぎ変えて)も、それで脳が納得すればそれで対応できるのだろう。それが、あるときはマジックのネタになり、リハビリになる。そして、心霊現象詐欺師の商売道具にも。

脳のなかの幽霊 (角川21世紀叢書)

「事象の地平線」を見るため世界の電波望遠鏡をリンク

ブラックホール ノートPC1万台分のCPUを10ヶ月回した結果がそろそろ出る頃らしい。

 CETI at home みたいなスクリーンセーバーつくてくれたらうちのDELLも参加したのになぁ。つっても、古いから戦力外通告されるかもしれんがwww
 しかし、この「直径は約2000万kmよりも小さい」というのはブラックホールを地球空間尺度で換算した「これくらいだろう」でしかない(空間自体が歪むので)。黒い天体が有るのではなく、その中に素粒子の塊のようなものがあるんだろうか・・・貧弱な脳では想像すらできない。

 ホント、数学者や物理学者の妄想力は素晴らしい。こんなわけの分からない物に挑戦しているのに、なんで超能力とか占いとか心霊現象を信じることのほうを面白がる人がいるんだろう。「科学で割り切れるより得体の知れない物(心霊現象や幽霊などを指して)があるとするほうが楽しい」とかいうツイートがあってフォロワーにたくさんいいねされていたが、物理学者のこの途方もないチャレンジのほうが見ていて楽しいしワクワクする。縛霊とか心霊スポットとかよりはるかに訳がわからないし楽しいと思うけどなぁ。

参考になるサイト:地球サイズの望遠鏡でブラックホール撮影に挑む【4】「事象の地平線」のいったい何が面白いのか?

ブラックホールの「事象の地平線」を撮影へ。世界の電波望遠鏡をリンク、地球規模の電波干渉計として使用 – Engadget 日本版
 日本、米国、ドイツ、台湾、チリといった国の電波望遠鏡を連動させ、地球サイズの基線をもつひとつの電波干渉計として動作させるEHTは、約20年間の歳月をかけて構築され、ようやくその目的であるブラックホールと捉えようとしています。その性能はハッブル宇宙望遠鏡の100倍以上とされ、地球から月の表面に置いたCD1枚をみつけることができる解像度を備えます。

EHTが目標を定めるのは、超大質量ブラックホールと考えられているサジタリウスA*。このブラックホールは太陽系も属する天の川銀河の中心、地球から2万6000光年離れた位置にあります。太陽のおよそ400万倍の質量がありながら、その事象の地平線(光が逃れられなくなる境界線。見かけ上は真っ黒な球体になると考えられる)の直径は約2000万kmよりも小さいと考えられています。

4月5日からの観測では、サジタリウスA*の事象の地平線を捉える予定ですが、そのデータ量が膨大になるため、観測チームはノートPC約1万台分のコンピューターモジュールを用意。米マサチューセッツのMITヘイスタック天文台に設置したストレージにデータを集約して分析を実施する予定。ただし分析が終わって、われわれが事象の地平線を画像として見られるのは、おそらく2018年初頭ぐらいになる見込みです。

AI とヒューマンインターフェース

 錯視は錯覚と同様、人間の知覚について教えてくれる。

 fig2 のような図形では、理性で「これは同じ長さ」と思うことで納得はできる。

 fig3 のような絵では、説明されるまで虎は見えないのに、「ここに虎が描かれている。ここが目で・・」と説明されて認識すると、虎の絵が普通に認識されるようになり、それ以降はそこに虎がいる絵にしか見えなくなる。

 また、fig4 のような絵では女性の顔とサックスを吹く人の全身を横から見た図の両方を意識的に行ったり来たりできる。

 ところが、fig.1 は全く無理だ。印象で錯覚するとか理性で理解するということが全く不可能だ。これは人間の「見る」ことの限界を教えてくれる。目撃者の証言で「赤い服を着ていた」とあった時に、赤い波長の光線を反射するものを見に付けていたと決めつけてはいけない。嘘発見器やベテラン刑事の勘でも見破ることはできない。目撃者は誠実に自信満々に「犯人は赤い自動車に乗って逃げていきました」と言うだろう。本人もそう信じているのだから。人間の行う自己申告の限界がAI医療の限界になるだろう。

 もっとAIにとって難易度が高いのは去年話題になった「青か金か分からないワンピース」だろう。同じものを見てある人は青、ある人は金というのだ。しかも自信満々にだ。

がんばれ!アドミンくん こちらも、人間の心理を穿っている。

 選択肢を持たせることで消費者が「自分で選んだ気持ちになる」ように仕向けるという手法だ。そうした方が、結果的に同じものを買ったとしても満足感が高いことはマーケティングでは常識だ。選んだ気持ちにさせれば、同じ結果であっても満足感が高い。そのために、誰も買わないようなロースペック仕様がラインナップされるのだ。

 ただし、代替案の設定をうまくやらないとベストな案ではないものが選ばれたり、意図が見抜かれたりする。

 なお、fig.1 の出典元の北岡明佳の錯視のページは、興味深い錯視画像が数多く掲載されている。AIが見たら混乱するのだろうか。少なくとも猫は人類と同様の錯視があるようだがww


日本人にだけ読めないフォントをOCRにかけてみた

情報源: 日本人にだけ読めないフォント「エレクトロハーモニクス」をプログラム用エディターに設定してみたら

 これも脳のパターン認識を教えてくれる。点が3つあるだけで顔に見えるのと一緒だ。

 日本語OCRはこれをどう解釈するのか試してみた。

・認識結果 1

〃フォルタ以下のファイルをすべて取得
functionget_file_tist($dir){
$Ust=array();
$fites=scandir($dir);
foreach($fitesas$fite){
if($fite=='.tlI$fite=='..'){
cont工nue;
}etself(is-fite($dir.$fiLe)){
$しist[]一$dir.$fite;
}eLseif(is_dir($dir.$fiLe)){
//$List[]=$dir;
$tist=array_merge($tist,get_fiLe_tist($dir
.$fite.DIRECTORY_SEPARATOR));
}
}
return$List;
}

 解像度の低い元ファイルをjpegで保存して認識したので通常のフォントのものでもミスはあるが、大半は正しく認識されている。


・認識結果 2エレクトロハーモニクス

ノノフオルダ以下のファイルをすべて取得
子]白〔ナエロ白qモナ_予工レモ_レエ5ナ(事ワエR}【
事レェ5ナ=ム1《1くムγOこ
事子工レES=5こムロワエR(事ワエR);
チロRE[b(eFエレES5,子工レE)【
工子($子工レE■=㌔gl5子工レモ==㌔●')【
⊂口自ナ工口]{∋星
】モレEEエチ(工S_子工レモ…(,ワエR。,子工レ妊))【
,レエ5ナ日_,ワエ1《事予工レモこ
】モレSE子⊂工5_ワエR($ワエ1《。S子工レモ})【
ノノ事レエ5ナロ=盲ワエ1聖
,レエ5ナニムRRムソP口ERqモ(,レエ5ナ、geナ子工レ壱レエ5ナ(!ト
ワエR。,十工レE。ワエRモ[ナロRソ_5モアムKムナロR)):


尺モナコRrコ,レエSナ;
]

 記号や特定の文字だけが正しく認識されている。自分と同様にカタカナとして認識しているものと漢字として認識されているのも面白い。人間だと、周囲がカタカナだと引っ張られてカタカナを優先するらしい。

 上と下とを見比べて気づいたが、何箇所か自然に読める文字列がある。”List”, “if”, “else if”, “continue”, “file”, “return”, “dir”,”get” などは自然に頭に入ってくる。引用先の記事にある一番上のグラフィックの文字列はカタカナとしてしか認識できないのに。これも人間の認識を伺わせてくれる。

 人間は文字列を見たときに文字列として認識しようとした後で個々の文字認識を行うのだろう。だから、「サンプンリグ」や「サソプリング」を「サンプリング」と読む。読んでしまうために校正ミスが起こるのだが、文字列で一括処理したほうが楽で速いから。FEPの文節変換と単漢字変換の差といっていいかもしれない。

 そして、文字列の見かけだけでなく文脈も使って認識を進めるに違いない。

九相図:「人間が地球に還る様子を観察するテキサスの巨大研究所」

九相図
京都市南区西九条の西福寺に伝わる九相図
 ドグラ・マグラを読むともっといいかもしれない(青空文庫で夢野久作のドグラ・マグラを読む)。六道絵は先日行ったベルギー奇想の系譜展にあった宗教画に近いものではあるだろうが。

 一つ気になったのは「地上に放置される場合は、動物に荒らされないようケージが被せられている」という文。動物に食べられるのも微生物に分解されるのも「地球に還る」ことに変わりはない(微生物のいないエベレストの頂上近くで亡くなった登山者は分解されずに干からびてミイラ化する)。野生の動物や植物に分解されるのも含むべではないだろうか。

 菌類に分解されて地球に還すのが大好きな伊沢正名さんはドナーとして菌類に分解されていただきたい(ラジオ組体操「怖すぎるゆるキャラ、食い逃げスイミング、野でするアレ」をどぞ)。


【閲覧注意】死体を放置して「地球に還る」様子を観察する、テキサスの巨大研究所に潜入:画像ギャラリー|WIRED.jp
米テキサス州には、敷地のあちこちに死体が放置されている研究所がある。しかも、犯罪組織が関与する恐ろしいものではなく、れっきとした公立の研究所だ。

世界には、そこら中に腐乱死体が転がっている施設があることをご存知だろうか? それは殺人鬼の家でもなければ、マッドサイエンティストのラボでもない。れっきとした公立の研究所があるのだ。グアテマラ育ちの写真家、ロバート・シュルツはプロジェクト『The Washing Away of Wrongs』を通じて、こうした研究所の知られざる活動に迫っている。
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ARで失われた腕を取り戻す

 脳はホントに面白い。「脳の中の幽霊」で挙げられた症例も人間の知覚について教えてくれる。

脳の中の幽霊 (Phantoms in the brain)
 「脳の中の幽霊」という本では暗箱と鏡を使って同様のことを行っていたがARヘッドセットならもっと効果がありそうだ。

 この記事の「拡張現実を用いた新しいタイプの治療が、最も難治の幻肢痛でさえ和らげるのに驚くほど効果的なのだ。」という表現は誤りだ(誤訳かもしれないが)。治療方法はすでにあった。「鏡によって行われていた治療法をARにすることで、従来の方法では困難だった幻肢痛でさえ和らげられた。」が正しいだろう。

 それはともかく、このARによる治療は従来の鏡と暗箱による仮想現実と異なる可能性を秘めている。それに、暗箱では鏡で右手を見ているだけだから、右手からのフィードバックが邪魔をしそうな気がする。ARなら右手と関係なく左手を操作できるので、効果があるのではないだろうか。また、両手がない患者の治療にも使えるはずだ。

 なお、このエントリの表題は幻肢痛の治療と正反対だ。ARによって脳に腕がないことを教えるのだ。それによって、異なる部位から送られる信号を手から来たと勘違いしなくなるのだ。

ARを用いた治療が、幻肢痛を和らげる | TechCrunch Japan
幻肢痛は、不思議な病だ:切断手術を受けた人たちが、そこには存在しない腕や脚にずきずきとした痛みや急激な痛みを感じる — 実際には存在しないということが治療を極めて困難にしている。ところが、拡張現実を用いた新しいタイプの治療が、最も難治の幻肢痛でさえ和らげるのに驚くほど効果的なのだ。
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手品から学ぶ「気がつかれずに意識を操作する方法」

 「脳はすすんでだまされたがる」と同じ題材だ。下の記事のほうが先だが、研究としてどちらが先かは分からない。

 「広告や政治的な宣伝で使われている手法の多くは、手品の手法に似ている」という指摘に付け加えるなら占い師(ヒーリングとかスピリチュアルという連中を含む)や宗教家、マスコミなどの詐欺師全般にも当てはまるだろう。詐欺師が使うのはコールド・リーディングだろうが。

手品から学ぶ「気がつかれずに意識を操作する方法」|WIRED.jp
2008.08.20 WED 23:00
数千年をかけて磨き上げられた手品師たちの知恵には、人の認知パターンを利用した手法が詰まっている。この仕組みを解明することで、認知パターンの理解を深め、人為的操作に抵抗するヒントを得る研究が進められている。

手品の仕掛けは単純に見えるかもしれない。しかし、それらは人の認知パターンを利用しており、その解明はまだ始まったばかりだ。

心理学者の中には、手品を用いて脳への理解を深める方法を思案している者たちがいる。そしてこの研究は、広告への耐性をつけるのにも役立つ可能性がある。

「いままで、(手品の仕掛けには)ほとんど注意が払われてこなかった。その効果は大きく、再現可能で、ほぼすべての人に有効であるにもかかわらずだ」と語るのは、ブリティッシュ・コロンビア大学の心理学者Ronald Rensink氏だ。

Rensink氏と、ダラム大学の心理学者Gustav Kuhn氏は、7月22日(米国時間)付けの『Trends in Cognitive Sciences』誌に発表した論文の中で、数千年にわたって謎を見破ろうとする観衆のまなざしによって磨き上げられてきた手品師たちの知恵は、人の知覚と認識を研究するものにとって、解明への洞察を与えてくれると論じている。

両氏によると、手品を科学的に解明できれば、認知科学と手品の両方を新たな高みに導けるという。それだけではない。広告主のたくらみから自分の身を守るのに役立つ可能性もある。
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