天藤真(てんどうしん)の短編集。
夫婦の間での陰謀を皮肉を込めて描く。推理小説として、2003年では通用しない設定や登場人物の情動が多いが、夫婦の駆け引きのスリリングさは変わらない。
カバーがとんでもないが、古本屋でなら買ってよし。
天藤真(てんどうしん)の短編集。
夫婦の間での陰謀を皮肉を込めて描く。推理小説として、2003年では通用しない設定や登場人物の情動が多いが、夫婦の駆け引きのスリリングさは変わらない。
カバーがとんでもないが、古本屋でなら買ってよし。
星新一のショートショート。
かなり時代を感じさせるが、ピリッとスパイスの効いたアイデアを次々生み出す才能には舌を巻く。水増しして、中編に持ち込めるような題材を惜しげも無く数ページに凝縮してしまうのがすごい。
カバーのデザインが古臭くて電車で読むにはちょっと勇気がいる本でもある。
時間があるなら定価でも買って読め。
清水義範作品。理科というか科学というかを文系っぽく、作者の理解の枠の中で説明した作品。それだけに、俺のような人間にも分かりやすく、同じような思い込みをしていて訂正されたりもした。
一つ、遺伝子の部分は、曖昧にしか分かってないことすら知らなかったことを思い知らされた。遺伝情報として使われるのは一部に過ぎないというのは初めて聞いた気がする。生物の時間に説明されたのかもしれないが、睡眠時間に当てていたので全然記憶にないのだ。
古本なら迷わず買いだが、定価でも476円だから悪くない。
またも清水義範。おもしろい読み物だが、文章を書くことにこだわっている文章ヲタクさが楽しい。
しかし、「手垢の付いた言い回し」の章は特におもしろい
(永田町の論理について書いてきて)正体不明の言葉でしか政治不信を表現できないのは、実は、国民に対し、本当にある問題について具体的には知らせないでおく、という結果を生んでしまうのである。
これを口にしてわかったような気になって、その分野について通のような気分を味わっているとは・・・特にこういうのはタチが悪いのである。
なぜ・・・といえる、と書かないで、といっても間違いではあるまい、と書くのだろうか。そこには、・・・・ちょっと語調を弱めることによって、なんとなく納得させちまえ、という策謀があるのである。
う〜ん。痛い。ここは特に心しておきたいといってもあながち間違いではあるまい(^^;
新品でも460円だから、買って損はない。ただし、旅行にはおすすめしない。あっという間に読み終わっちゃうから。
天藤真
数十年前の推理物。時代が中途半端で興味をそがれる設定が多いのが読みづらいが、面白いアイデアが所々にある。読みやすいので3時間もあれば十分。とりたてて言うことはない。古本で見つけたらどうぞ的な感じだ。
しかし、追い詰められた人物が島に帰って、悪人に追い詰められたとき、島のコミュニティ・ネットワークで対抗するところが好きだ。それは、クロコダイル・ダンディ2で主人公の追跡を命じられたアボリジニが笑いながら銃を持った悪人の前から忽然と消えてしまうシーンを思い出すようだった。
一番好きなのは「採点委員」だが、何回も読み返したのは上のシーンだ。文体が今一で折角のアイデアを活かし切れないのが残念だったが、
ディクスン・カーの半古典的推理小説集。時代・舞台を楽しむ心構えで望みたい。
トリックや謎解きは色あせる。後代に出るものは前に作られた作品を参考にして作るのだから当り前だ。また、トリック以前に、犯罪技術も操作技術も数十年前から進歩を続けている。社会の変化や科学技術の変化も大きい。犯罪や捜査の技術も推理小説の影響を受けて進化したことを忘れてはいけない。
現在の高見から過去を見下すのは愚の骨頂だが、その愚をもってしても色あせないのがエドガー・アラン・ポーだ。原書で読む能力のないヘナチョコなので、訳者の力量や翻訳された年代による影響も差し引く必要があるのかもしれないが、ポーの作品は時代や技術に汚染されない孤高を感じる。
澁澤龍彦のエッセイ集。「円熟期の論考」と書いてある。澁澤節はいたるところにちりばめられているが好みではない。バラバラな初出本からかき集めたものだから仕方がないのだろう。河出とか中公に出版されていない落ち穂を拾ったような感じだ。ちなみに、出版は学研M文庫だ。
俺が大好きだった、朝日新聞の「遊びの博物誌」に言及したものがあり嬉しかった。作者の紹介に引き出しただけだが、そのコラムを好ましいものとして意識していたことは事実だろうから。
もし、古本屋で見かけたら買ってもいいが、定価で買うなら中公文庫か河出文庫のほうがいい。河出文庫の方が充実しているが当たり外れが有る。その点中公文庫から出ているものはどれも読み応えのあるものだけだから(俺が好きなだけかもしれないが)、お勧めしやすいのだ。中公文庫版なら定価でも全然損はしない(しつこいようだが、俺の好みだ)。
短編集。ミステリーというより幻想系か。「前に持ってたかも」と思いながらも、100円だったので買った。定価でも十分に価値があると思う。
清水義範。
単位の解説とまつわるフィクションとを取り混ぜた、独特の単文集。分かったつもりになっていたものを分かったつもりで終わらせないことができるかも。俺の場合は、いろいろある中でE=mc^2が一番おもしろかった。
後、覚えておきたい知識として、地球の自転が2億年で1時間の割合で遅くなっていることと月が2cm/年遠ざかっていること。地球の自転の速度の問題は地球上の生物の進化・絶滅を考えるときに必須のパラメーターだろう。自転の速度が変われば気候にも影響を与えるだろうし、自転が止まれば、変化に応じた変化ができなかった種は絶滅するだろう。
もちろん、どちらにしても50億年もしないうちに太陽の赤色巨星化に伴う温度上昇で絶滅はするのだが、どちらが先なのか考えるのは楽しい(か?)
とりあえず、古本屋で見つけたら迷わず買うことをお勧めする。
谷崎潤一郎の作品集。種村季弘が編集したもの。
じつは、谷崎の本を読むのはこれが初めてだ。長い小説なんて大嫌いで、短編ばっかり読んできたから。内容については俺が語るべきことは何もないだろう。
ただ、比較的ボリュームもあり、旧仮名遣いもありで時間がかかりそうだったが、意外と時間がかからなかった。文自体を読むことにストレスがかからないからだろうか。これが「文豪」の実力ということなのだろうか。
しかし、このおっさんの色と食い物に対する執着は危ないほどだ。「美食倶楽部」は途中の食事のシーンを書きたかっただけ。「白昼鬼語」「友田と松永の話」「青塚氏の話」は女を描きたかっただけのような気がするほどだ。