人が死なない。誰も不幸にならないミステリー。
ストーリーや謎については述べない。
一人称で書かれていて、ブレがない、読みやすい、トリッキーな事をしていない作品だと思った。一人称で書かれているのに主人公が登場していない場面の記述があるような作品があってとまどう事があるが、この作品にはそんなことはなかった。
が、第三者の会話で人名が漢字で記載されているのに違和感があった。主人公がパン屋で働いている時に客の直説法の会話に出てくる名前が漢字だったのだ。
普段の生活でそんなことはあり得ない。知らない人同士が会話しているのを横にいて、
「ひろしくんときのうがっこうからのかえりに…」
と聴いた時に
「ひろし君と昨日学校からの帰りに…」
と書いてあるのは受け入れられる。この方が読みやすいし。
しかし
ひろし」を、第三者が「博」と当てたら不自然だろう。全体が一人称で上手に書かれているから余計に感じたのかもしれない。
後、作品の舞台は大阪大学付近っぽいが、関西弁を話すのがほとんどいない。周囲に関西弁を話す人が少ない理由は説明されている。大学には他地方から来ている学生が大半だからと。
それは分かる。しかし、学生じゃない、地元民でありそうなパン屋の店長とかパン屋の先輩の彼氏とかがゴリゴリの標準語て、ちょっとなぁ。
まあでも、「このミステリーがすごい」とか言われると、「今のミステリーってこういうのも入るんや」とは思うけど、嫌な読後感がない作品で楽しかった。