どこに問題が?>業務停止「アディーレ法律事務所」怒濤CM攻勢の損益計算書

 「損益計算書」という単語に興味を惹かれて開いたが損益計算書に該当するような情報はなかった。ライターは損益計算書というものを知らないのだろう。

 業務停止命令を受けたらしいが、その対象は他業界でもよくある広告手法だ。普段20%引きで800円で売っているものを期間限定で30%引きとして700円で売るキャンペーンはどこの小売店でも(Amazonや楽天でも)見る。定価で売っていることを見たことがない。厳密に言えば割引率をご認識させる手法として公正な価格提示といえないということは分かるが、消費者自身が騙されたという印象を持たなくなっているのが現在だろう。それに、普段20%引きで売っているものが30%引きになっていたら、少なくとも普段よりは安くなっているのだから、損害はない。つまり、アディーレ法律事務所が業務停止命令を受けた理由がこれだけのことならという前提付きでそれほど悪質とは思えない。

利息制限法の上限は超えるが出資法の上限は超えないグレーゾーン金利は、06年の最高裁判決以降、争えば勝てる案件になった。これを確実にとって効率よくお金に変えるシステムを作った点は画期的でした。業界内の悪評さえ気にしなければ、ビジネス上のライバルはいませんでした」

 これについては全く問題はないだろう。利息制限法の上限より高い利息で貸し付けていたサラ金から金を取り戻す個人を法律の専門家がサポートして対価をえるのは弁護士の本来の姿だ。そこで、依頼者から不当に高い手数料を取っていたのならともかく、このことをビジネスとして取り組んだことを批判するのはおかしい。

一般的な弁護士事務所は、一人当たり年間5000万円売り上げれば十分なのに、アディーレでは過払い金がガバガバ入り、私の売上げも月に億を超えていた。

 「売上」が何なのか自分にはよくわからないが、それだけ多くの人が過払い金を取り戻すことに貢献したのなら批判はできない。

石丸さんがある人物に“これでベトナムでカジノを立ち上げてくれ”と億単位のお金を渡し、持ち逃げされたこともありました

 悪印象を作ろうとするために付け加えた感が強い。単に投資の失敗だ。ある人物の選定や投資判断が違法なものであったのならともかく、そういった情報はここには書かれていない。海外のブローカーみたいなのに投資案件を持ちかけられて持ち逃げされるなんていう事例は日本企業には日常茶飯事だろう。

「効率化のおかげで職場環境はよく、基本8時間勤務で、産休や育休もとれる。年収は地方の支店長になれば若くても1000万円。でも離職率は高い。所属弁護士の多くは10万円を出資していますが、1000万円を出資している石丸さんが、たとえ代表を辞めてもワンマンです」

 ホワイト企業じゃん。これだけの待遇を社員にできる企業が日本にはほとんどない。支店長の年収が1,000万円というのが多いのか少ないのかは分からない。弁護士の平均年収と比較する必要があるだろう。

業務停止「アディーレ法律事務所」 怒濤CM攻勢の損益計算書 (デイリー新潮) – Yahoo!ニュース

 こんなにCMを流せるのは、よっぽど儲かっているからだろう。そんな囁きが方々から聞かれていたアディーレ法律事務所。このたび業務停止の処分を食らったが、実際、利益至上主義とそのための効率化に突っ走り、大儲けしていた。

 CMで連呼するものだから、アディーレ法律事務所の名を知らない人は、少数派だろう。6月からは人気芸人のブラックマヨネーズが起用され、怒濤のCM攻勢のおかげで、「過払い金」という言葉もポピュラーになった感がある。

 ところが10月11日、東京弁護士会から業務停止2カ月、元代表の石丸幸人弁護士には同じく3カ月の懲戒処分が下され、なにやらブラマヨにもケチがついた格好になってしまった。

 処分の理由は、過払い金返還請求の着手金無料キャンペーンを、ホームページで1カ月と謳いながら5年近く続けたというもの。なかなか厳しい処分だが、

「過去にも懲戒されたことがあり、この件については消費者庁から措置命令が出されていた。つまりイエローカードが2枚出された後だったのです」

 と、最近までアディーレで勤務していた弁護士。懲りない事務所のようだが、さる弁護士が語るには、

「2004年にアディーレを設立した石丸さんは横浜国大経営学部を卒業後、セガ・エンタープライゼスに入社、ゲームセンターの副店長をしていましたが、飲酒運転で3回捕まって懲戒解雇になった。元来が懲りない人なんです」

 その後、IT企業などを経て01年に司法試験に合格したのだが、

「自分をマーケッターと呼び、弁護士は金儲けが下手だから、上手くやれば金儲けができると思って弁護士になった、と堂々と言っている。テレビに出るのも売名して仕事をとる宣伝の一環で、テレビ朝日『スーパーモーニング』に出ていたのも、自分から売り込んできたと聞いています」(同)

 そんな人物が立ち上げた法律事務所の業務とはいかに。先のアディーレ出身弁護士が語る。

「利息制限法の上限は超えるが出資法の上限は超えないグレーゾーン金利は、06年の最高裁判決以降、争えば勝てる案件になった。これを確実にとって効率よくお金に変えるシステムを作った点は画期的でした。業界内の悪評さえ気にしなければ、ビジネス上のライバルはいませんでした」

「宣伝さえすればお客は集まり、たいした努力もせずお金になった。加えて業務のマニュアル化。裁判は効率が悪いので早期和解を狙う戦略で、和解に当たっては貸金業者ごとに細かいマニュアルが作ってある。結果、世が福島の原発事故で騒然とするなかでも強い追い風が到来し、ずっと黒字続きでした」(同)

 ちなみに、アディーレ法律事務所の所属弁護士は185人で、拠点は全国に80以上。売上げは昨年3月期が80億円、今年3月期が73億円におよぶ。

「一般的な弁護士事務所は、一人当たり年間5000万円売り上げれば十分なのに、アディーレでは過払い金がガバガバ入り、私の売上げも月に億を超えていた。石丸さんがある人物に“これでベトナムでカジノを立ち上げてくれ”と億単位のお金を渡し、持ち逃げされたこともありました」(同)

 余裕があるのだ。だからCMについても、大手広告代理店の関係者は、

「アディーレの広告費は、スポットCMの値段、出稿数からすると、年間20億円規模ではないか」

 と概算する。アディーレ出身弁護士の話に戻ると、

「効率化のおかげで職場環境はよく、基本8時間勤務で、産休や育休もとれる。年収は地方の支店長になれば若くても1000万円。でも離職率は高い。所属弁護士の多くは10万円を出資していますが、1000万円を出資している石丸さんが、たとえ代表を辞めてもワンマンです」

 だが、その業務は、消費者問題に詳しい紀藤正樹弁護士によれば、

「アディーレの仕事は稚拙で雑だと、方々で聞きます。裁判所も、アディーレから来た書面は、念のために精査をすることになっていると聞いています。法律事務所としては大変不名誉なケースです」

 石丸氏もアディーレの広報部長も、取材の申し込みに梨のつぶて。そんな石丸氏は現在、弁護士業界より“市場規模”が大きい医療業界での“ビジネス”を見据え、北里大学医学部に通学中。懲りずに医療で利潤追求されてはたまらない。

「週刊新潮」2017年10月26日号 掲載

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