Born to run(といっても Bruce Springsteen じゃないやつ)

 フォアフット・ストライク走法とかミニマリストとかウルトラマラソンとかビブラム・ファイブフィンガーズといったキーワード界隈で頻繁に目にする Born to run を読んだ。Kindle unlimited の対象に入っていたからだ。

 物語ではなくドキュメンタリーだ。ウルトラマラソンの発祥から、ウルトラマラソンランナーの生態、筆者が現代のランニングシューズを捨ててランニング障害から克服されたことを通じてランニングを科学的に分析すること、最終的にタラウマラ族とエリートランナーのレースまでが描かれる。

 個人的には登場人物が多すぎて「こいつだれやった?」となることが多かったが、これは自分の記憶力の問題だろう。細切れのエピソードが挟み込まれるので「はよ、レースの話しろや」となった。

 この本にはいろんなメッセージが詰め込まれてごっちゃになっている。過保護シューズ批判、フォアフット・ストライク走法、菜食主義、自然回帰指向などアメリカ人が書く日本文化礼賛記事のような胡散臭さが鼻についた。

 この本を読んでも裸足ランニングをやろうともワラーチを履こうとも思わない。ハイテクシューズが今でも大好きだが、一方でフォアフット・ストライク走法は身につけたいと思う。菜食主義にもならないしネットワークもエアコンも自動車も使う。今の日本社会とタラウマラ族が住んでいる場所が違うのだから、タラウマラ族のライフスタイルを今の日本社会の規範にすることなどできない。

 足の故障原因をクッションシューズのせいといい切っているが、ホントにそうか分からない。筆者はクッションシューズをやめたら故障から開放されたそうだが、クッションのないシューズで走ったらそれが原因となって故障する可能性も高いだろう。クッションシューズから初めてクッションの少ないシューズにすることは間違いではないと思う。クッションシューズが必要な初心者がミニマリストシューズでランニングを始めたら故障知らずでいられるとは思えない。

 自分は、ランニングを介した頃からビブラム・ファイブフィンガーズや Mizuno Be を履いているが、長距離を走ってはいない(VFFでジョギングしてふくらはぎがパンパンになってからはだがww)。

 科学的な分析は多いが、それが医学界の共通認識なのか分からない。大学の教授や著名なコーチなどは多数出るが、筆者が取捨選択した取材先でしかない。取材の時点で、裸足ランニングに興味を持って研究している研究者を探している可能性はある(そうでない可能性ももちろんある)。傍証記事を読んでみたいと思う。

 足を鍛えるために裸足に近い状態で過ごすことが健康にいいとは思う(だからVFFやBeを履いている)が、それでマラソンに出るのは別の話だ。人類が進化する段階では靴など無かったとはいうが、人類が進化する段階では舗装道路もなかった。舗装道路を何十キロも走るなど最近の出来事だ。槌の上を走って進化してきた人間だからといってそのまま舗装道路を走るのに適しているかどうかは分からないだろう。Nike の breaking 2 でもクッションのある板バネ入りのシューズが使われた。彼が裸足だったら2時間切れたとは誰も思わないだろう。

 それと、今、ランニングを始めようとしている Born to run の読者はすでに何十年も靴の生活をしてきている。成長の段階で数百年前の人類より足が発達していない可能性がある。そのような人間が保護機能のないシューズを履いたら逆に怪我してしまうのではないか。

 こんな素人の記者ではなく、もっと長期的・統計的な調査が必要だろう。運動靴メーカーの協賛は得られないだろうが・・・

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