ウェアラブル市場の課題を解決するのは・・・

 ウェアラブルデバイスの市場は実は大きくは変わっていない。あったのは Apple watch の新規参入によるパイの拡大と失速によるパイの縮小だけだ。スマートウォッチもフィットネス・トラッカーもニッチなオタク向けのデジタルガジェットでしかなかった。ただ、Apple watch の参入により競争関係が大きく変わり、淘汰された企業が目立っただけだ。

 下の記事には納得できることが多い。Android 2.0 もそれ自体は起爆剤にはならない。しつこいようだが、スマートウォッチに必要なのは回線だ。回線さえあれば、「スマートウォッチでできるのにスマートフォン持ち歩く必要ないやん」という時代になる。「回線こそがスマートウォッチを救う

 Android 2.0 の回線付きスマートウォッチがこの回答になるのか。Android 2.0 の脱スマートフォンという方向性は正しいと思う。というより、この方向にしか未来はないと思う。2017年2月に発売されるとされているスマートウォッチがスタンドアローン・スマートウォッチとして普及するかどうかは分からない。Apple watch に回線が付けば火がつくと思うが、Android wear 2.0 と LG にその影響力があるとは思えない。

 また、電池の持ちがウェアラブルデバイスとして許容範囲かどうか、そして Apple watch 2 より安いかどうかだ。LG ブランドで 4 万円以上は無理だろう・・・

昨年苦しみを味わったウェアラブル市場の課題
今は手首にはめるデバイスにとって「待ち」の時期だ。数年間ものすごい盛り上がりを見せていたウェアラブル業界だが、今年のCESではあまり目立っていなかった。2つ、3つ新しいスマートウォッチが発表され、パートナーシップやそこそこの出来のフィットネスバンドがアナウンスされたくらいで、業界全体のフォーカスとしては、Alexaを搭載した種々のデバイスやスマートホームへとシフトしたように感じた。

Andoroid Wear 2.0のリリースが遅れたことを主な理由として、メーカーがなかなか新製品をリリースできなかったという背景もある。現在のところ同OSは2月2日にリリースされる予定だが、ホリデイシーンズや1年で1番大きなテック系展示会を逃すなど、リリースのタイミングとしては最悪だ。

そしてリリース後は、ウェアラブル業界が傷のなめ合いに必死になることだろう。全体としてパッとしなかった(いくばくかストレスがたまるような)2016年の状況を考えると、CESの様子は当然だとも言える。IDCは昨年10月に、2016年Q3のウェアラブルデバイスの出荷台数が前年同期比で51.6%減少したという、悲惨なデータを発表していた。そして先日TechCrunchでも報じた通り、12月にはeMarketerが「特にスマートウォッチは消費者の心を掴むことができなかった」という言葉と共に、ウェアラブル業界の成長予測を大幅に下方修正した。

業界をリードするプレイヤーの中にも、昨年は苦汁をなめた企業がいくつかあった。Fitbitの株価は急落し、Intelもウェアラブル業界では以前より力を緩めたように見えた。年末にさしかかると、MicrosoftがBand 2の販売を終了し3をつくる予定もないということがわかり、Bandはほぼ亡きものとなった。Jawboneはどうしてるのかと疑問に思う人もいるだろうが、彼らのビジネスもうまくいっていない。

Jawboneに対する特許訴訟を取り下げる際に、Fitbitは同社が実質倒産状態にあるという発言を残し、Jawboneはこれを強く非難していた。しかしFitbitの発言が誇張されたものであったとしても、Jawboneが苦しんでいるのは間違いない。JawboneのCFOは、同社が資金調達を狙いながらコンシューマー向けデバイスから方向転換しようとしているという報道がなされる中、会社を去った。

ほかにもクラウドファンディングから誕生し、スマートウォッチブームの最前線にいたPebbleは、2016年を生き抜くことさえできなかった。同社は最後の作戦として、新しく2つのスマートウォッチとランニング用のモバイルデバイスをリリースする予定だったが、結局実際にはそのうちひとつしか販売されず、その直後にFitbitへの吸収、そしてPebbleブランドの終焉が発表された。

一方でウェアラブル業界が完全に闇に包まれているわけではない。Canalysは昨年末にかけてスマートウォッチの販売数が伸びたと発表している。「逆を示すレポートも発表されていますが、Canalysの調査によれば2015年4月にApple Watchがローンチされて以降初のフルクォーターとなった2015年Q3と比べ、出荷台数は伸びています」と同社は話す。もちろん彼らのデータはApple Watchのおかげによるものが大きく、CanalysもAppleの功績を讃えている。

一方でCanalysを含む数社が、昨年のウェアラブル業界の不調は、AppleやSamsungの製品、そしてAndroid Wear 2.0のリリースが予想より遅れたことが主な原因だと主張する。結局のところ、大手数社がウェアラブル市場の大部分を握っているのだ。

といはいっても、ウェアラブル市場が現在岐路に立っているということは否定できない。昨年の苦境は成長痛のようなものだったかもしれないし、ウェアラブルの進化に向けた次のステップの序章だったのかもしれない。逆に今後もっとひどいことが起きる可能性もある。いずれにせよウェアラブル市場は、初期の成長が早すぎたために今苦しみを味わっているのだろう。同市場の成長速度は比較するものがないほどで、「目新しいもの」から一気に「皆が持っているもの」へと進化していった。

市場が飽和点に達したというのも十分ありえる。購入したウェアラブルデバイスを、既に押入れの隅にしまってしまった人もいるだろう。結局のところウェアラブルデバイスは、ガジェットとフィットネス製品の間という微妙な立ち位置にあり、新年の抱負のように消えてなくなりやすいフィットネスへの決意のあらわれでしかないのだ。またウェアラブルデバイスの多くは大げさな万歩計のようなもので、それなりのスマートフォンであれば全ての機能をカバーできるということは言うまでもない。

ハッキリとしていることは、何かが変わらなければならないということだ。Android Wear 2.0には現状を一手に好転させるほどの力があるようには思えないが、少なくともそのリリースをうけて新しいハードウェアが誕生するだろう。そしてメーカー側は市場のこれまでの動きからヒントを得なければならない。ユーザーが健康に関するデータに興味を持っているのは間違いなく、大手メーカーのインフラも既に整っている。

次世代のウェアラブルデバイスは、ユーザーに多くを約束せず、彼らの期待以上の結果を残さなければならない。消費者はどんな製品を買っても一晩で習慣は変えられないということに気づいているため、もしかしたら次のウェアラブルデバイスは、服に埋め込まれたものやハイブリッドスマートウォッチのように、ユーザーが必要なときにだけ使えて、それ以外のときは存在を感じさせないようなものがいいのかもしれない。

互いに似通ったスマートウォッチやスマートバンドの勢いが弱まりはじめたところで、2016年の苦境をバネに本当のイノベーションが生まれることを願っている。

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