天邪鬼ランナーの疑問 反発力の正体?

シューズの反発力って・・」で中途半端に終ってしまったので補足。クッション材と反発材の変形のフェーズをもっと細かく見たい。

ランナーの進み方
fig1.ランナーの進み方
拡大図。オレンジ色がシューズの前方。
fig2. 拡大図。オレンジ色がシューズの前方。

 クッション材には2つの役割がある。一つは足が地面に当たる瞬間(fig1.2 の1)に変形物を挟むことで、衝撃の伝わり方を時間的に分散すること。変形することで衝撃(圧力)エネルギーの一部を蓄えること。変形時にエネルギーの一部を熱として放出すること。変形した状態から元に戻ることでエネルギーを放出すること。

 しかし、fig2 を見ればわかるが、クッション材が1で縮んでも2から3と進むに連れ接地面積は減る。また、大半のクッション材はかかと部分から土踏まずまでに入っていることが多いので、2 以降では全く効果はないだろう。

 反発材とは板バネのように働く、多くのシューズでは、縦長に造形された硬質な樹脂のこと。着地フェーズ(fig 1,2 -1)では変形はしない。次の、足が地面を押すフェーズ(2)では足が地面を押すエネルギーを地面に伝える。同時に、靴の角度が変わることで変形し角度が変わる力を蓄える(一部は熱として放熱)。足の力が抜けるフェーズ(3)で元の形に戻ることで足を押し出す(のか?)。

 自分がヘナチョコランナーだからかもしれないが、「シューズの反発力で進む」というのは全く理解できない。実際に「高反発力」を謳っているスピードランナー用のシューズを手で触ってみたら前足部は手で屈曲できた。確かに、初心者用に比較して曲がりにくいとは感じたが、自転車用のシューズとは比較にならない。こんな剛性では全体重を押し返す(慣性モーメントも効いているので前進するための全エネルギーではないが)ことは出来ないはずだ。

 「反発力」の正体は、足が靴を通して地面に力を加えているフェーズで変形しにくいことではないか。股関節や膝関節を伸ばすことで生じる力は腓骨から加えられる(fig 1 -2から3)。腓骨を下方向に押す力は足首の関節を押す。この時、ふくらはぎからアキレス腱が収縮(あるいは、長さを保つ)することで足首の関節から前方に力が加えられ、前足部から地面を押す力を生み出す。この時点で、曲がりにくい靴は骨から伝わる力を地面に伝えやすく反発力として感じるのではないだろうか。

 この時に重要なのは、反発力とは地面を押す力そのものということ。復元力ではなく変形に抵抗する硬さだということだ。だから、自分のように押す力のないランナーには反発力が感じられないのだろう。上に見たように、強く地面を押すためには2,3フェーズでアキレス腱を強く緊張させる必要がある。アキレス腱を傷めないために、本来なら3まで力を加えるところを、2までしか力を入れないようにしている。なので、New Balance VAZEE も NIKE FREE も差を感じないのだろう。

 今のランニングの主流はピッチ走法で、アフリカ系ランナーのようなフォアフットストライク走法は接地から離陸までの時間は非常に短く弾むようだ。一回一回のステップでシューズの復元を待つ時間はないだろう。これをもってしても、反発力はシューズの復元力ではなく、変形しない事だと分かる。

 本当にシューズの反発力で走るには、義足ランナーのような足の使い方が必要だろう。体重を載せて変形させたバネ(義足)の反発力を使って前に進んでいる。この場合、シューズ部分だけでなく、通常なら筋肉で行っている、足首部分の反発も義足が生み出しているが。

 このように、バネのような反発をシューズに期待するのであれば、バネの伸長サイクルに合わせて体重をのせる必要がある。体操選手がロイター板を使うようにだ。が、実際のランナーが地面に足を付いている時間は短い。

 極端な話、短距離の選手だとソールは自転車のロード用のシューズみたいに固くていいんではないだろうか。カーボンのソールに直接スパイクピンを生やしてやればエネルギーロスが減らせるだろう。

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