踊り場のiPhone、部品部材メーカーへの影響続く

 毎年のように話題になるなぁ。必ず頭打ちになるのはわかってるだろうに。というより、既に欧米や日本では頭を打っただろう。これまでは販売先が増え続けていただけだ。既に iPhone を使っているユーザの平均買い替え期間は伸びているだろうし、各市場でのシェアも横ばいではないだろうか。

 同じことを毎年書いている気がするなぁwww

踊り場のiPhone、部品部材メーカーへの影響続く
中根 康夫=みずほ証券2016/02/17 00:00
 当社が想定する米Apple社のスマートフォン「iPhone」の最終組立台数は、2015年第3四半期(7~9月)の推定実績が前年同期比34%増の5100万台である。その内訳は、6/6sが3200万台(うち6sが1700万~1800万台)、6 Plus/6s Plusが1200万台(うち6s Plusが500万~600万台)、5sが700万台。

 2015年第4四半期(10~12月)については、合計で前年同期比8%減の7500万台と見ている。内訳は、6/6sが4600万台、6 Plus /6s Plusが2400万台、5sが500万台である。

 6s(4.7型)は、2015年11月から早くも部品の発注調整が入った。初めはForce Touchやカメラ周りなど、供給ひっ迫リスクが高く多めに調達していた部品部材が主な対象だったと見られる。だが同年12月に入ってからは、液晶パネルや電子部品など調整対象が広範かつ大規模になった。第4四半期には、完成品生産台数も我々の想定に対して下振れた。

 6sシリーズは、発売当初から販売地域に中国が含まれていたため、強めの生産計画を組んだもよう。ところが特に4.7型の需要はApple社の想定に満たず、早々と生産計画を引き下げたと推測される。

過去にない規模の生産調整

 2016年に入っても、iPhoneの部品発注や生産の調整は続いている。同年の旧正月(春節)は2月8日からだが、2月には中国に工場を持つ部品・部材メーカーやアセンブラーの多くが生産を2週間以上、停止すると見られる。過去に見られなかった規模の生産調整となりそうだ。

 こうした状況を踏まえ、当社は2016年第1四半期(1~3月)のiPhone生産数量の予想を従来の4300万台(前年比28%減、前期比42%減)から4000万台(前年比33%減、前期比46%減)に引き下げる。

 前期比46%減は、iPhone 5s/5c発売後の2014年第1四半期(1~3月)における38%減を超える減少率である。2015年第2~4四半期前半に過剰に取り込まれた部品や部材については、出荷が前期比55%以上の減少になるものもあると見ている。

 4000万台の機種別内訳は、6/6sが2400万台(前回予想は2500万台)、6 Plus/6s Plusが1000万台(同1200万台)、5s/6c(4型、今後発売予定の新機種)が600万台(同600万台)である。ただし、6/6sには300万~400万台程度の6が、6 Plus/6s Plusには100万~200万台の6 Plusが含まれており、これら旧機種の生産台数は従来想定から引き上げている。

 また、5s/6cについては全体では変更しないものの、6cを引き下げて5sを引き上げた。いずれも、旧機種が生産数量を若干押し上げる形となる。

第2四半期は調整一服か

 2016年第2四半期(4~6月)の生産数量に関しては、全体では4700万台(前年比29%減、前期比15%増)と予想する。機種別内訳は6/6sが2700万台、6 Plus/6s Plusが1100万台、5s/6c(4型、新機種)が900万台である。

 生産調整の一服を受けて、第2四半期の生産数量は前期比では増加を想定している。ただし前年比では依然として約30%減と、サプライヤーの生産能力と比べて低水準の生産が続くと予想する。

 6cに関しては、アプリケーションプロセッサーが「A9」、カメラは1200万画素であるなど、6sシリーズの小型機種として投入されると見ている。年間の生産数量は2000万台以下と予想する。一方、5sはその割安感から販売が相対的に堅調と見られ、2015年12月から増産の動きが見られる。6sの発売後も5sは残すと考えられ、5sはロングセラーになる可能性が高い。

ヒット要素に乏しいiPhone 7

 2016年通年のiPhone生産数量については、前年比11%減の2億2400万台と予想する。根拠は次の2点である。

 第1に、同年上期の6s/6s Plusの生産見通しが前回想定を下回る。第2に、ハードウエアの機能や外観を差異化要素としてiPhone 7/7 Plus(と想定される後継機種)がヒットする可能性が低下している。なお、5.5型のデュアルカメラ採用比率が最も低い場合や、6cの設定小売価格が想定以上に高い場合などを考慮したリスクシナリオは、前年比17%減の2億1000万台に設定した。

 iPhone 7/7 Plusについては、機能面で消費者を引き付けると思われる点は、デュアルカメラ、およびカラーバリエーションの増加程度。アプリケーションプロセッサーの性能進化は、従来より小さいと見られる。ディスプレーの進化も少なく、外観は6sに酷似する可能性がある。防水機能やType-Cコネクター、Blutoothヘッドフォンの採用などは、あったとしても訴求力はさほど大きくなさそうだ。

買い替えサイクルが長期化

 スマートフォン買い替えサイクルの長期化や、通信事業者がインセンティブを付与する動機づけが低下していることなどから、iPhone 7/7 Plusが大ヒットすることを前提にはしにくい状況だ。ただし、BOM(原材料費)を抑えることで、従来機種に比べて小売価格を下げて需要喚起を図る可能性はある。

 現時点で我々は、2016年第3~4四半期におけるiPhone合計生産数量として前年比9%増の1億3800万台を見込む。内訳は、4.7型(6/6s/7)が前年比10%減の7000万台、5.5型(6 Plus/6s Plus/7 Plus)が同26%減の4500万台、4.0型(5s/6c)が同85%増の2300万台である。

 4.0型に関しては、2015年第3~4四半期の生産が漸減傾向だったのに対し、2016年は5sの継続生産に6cの増産が加わるため、大幅増を見込んでいる。

 iPhone 7に関しては、4.7型の生産数量を前年割れと見る一方、5.5型は2ケタ%の増加を予想する。5.5型のみに採用されると見られるデュアルカメラ機能が需要をけん引すると考えるためだ。

 デュアルカメラは、カメラ機能向上や3Dマッピングなどソフト面での利便性向上につながると見ており、期待できる。ただし、従来は5.5型では1機種のみでデュアルカメラを採用すると見ていたが、今回は2機種でデュアルカメラ採用機種と、従来と同じシングルカメラ採用機種に分かれるとの前提を置いた。

 4.7型については、現在の5.5型に採用されている手振れ防止(OIS)機能の採用が想定されるものの、それ以外に目玉となる要素がない可能性がある。6と6sで従来機種からの買い換えが大きく進むと見られることから、4.7型に関しては前年割れの可能性が高そうだ。

数量から価格、工場稼働へと影響拡大

 2015年11月から2016年第1四半期にかけては、iPhone 6s/6s Plusの需要不振を受けて生産調整が行われ、関連部品部材の発注が大幅に引き下げられた。バリューチェーン企業は、第1四半期については季節性の需要減を見込んではいたものの、調整幅はそれを大きく上回った。そのため多くの企業が売り上げや利益の見通しを引き下げている。

 それでも、第1四半期における影響はほぼ数量のみで説明できる水準だ。筆者の数量見通しが正しければ、第2四半期には部品部材需要が各社の生産能力を大きく下回る。

 韓国Samsung Electronics社や中国ブランドなど、他のスマートフォンブランドへの増販で埋められない企業は、第2四半期は引き続き数量面で影響を受ける。加えて、第1四半期末までに十分な在庫調整を行えていない企業は、稼働率も下げなくてはならない。

 カメラモジュール関係や触覚デバイス、Force Touchなど、急激な調整を余儀なくされた分野は、第1四半期が底になる可能性が高い。ただしそれ以外では、第2四半期に生産調整を余儀なくされるだろう。

 価格面の心配もある。Samsung社やApple社が強気の計画を組まない状況では、これまでひっ迫感の強かったハイエンド部品の需給も緩む可能性が高い。完成品ブランド側では、部材調達の鍵が「必要数量の確保、多少の在庫積み増し」から「在庫の抑制、購買価格の引き下げ」に移りそうだ。

 上述の通り、iPhone 7/7 Plusでは、BOMを上げてでも新機能を盛り込む従来手法とは異なり、不要不急のアップグレードは行わず、少なくともBOMを上げない方向に舵を切っているように見える。この場合、価格引き下げ要請の対象となるのは次のような部品部材だ。すなわち、コモディティー部品全般、サプライヤーが3社以上いる分野、iPhone 6s/6s Plusから大きな改良なくiPhone 7/7 Plusでも採用される部品部材、Apple社が設計や部材調達、使用するIPに深く関わっている分野など。技術やコスト面での競争力の違いを背景に、サプライヤー間でも影響度合いが大きく異なる可能性が高いことを付記したい。

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