大塚家具に学ぶ「災い転じて福となす」方法だと?

d9231-12-948379-0 マーケティングというのか・・・もちろん、親子喧嘩を演出していたとしたら話は別だが。

 家具を買う機会はほとんど無いし興味もない自分のような人間からしたら、大塚家具なんて地方のシャッター書店街みたいなものだ。興味もないし期待もしない。家具を買いたいからと思ったとしても選択肢として全くイメージ出来ない。消費行動自体が変わった。それに大塚家具は対応できなかったから業績が悪化したのだ。その流れを変えることができない限り、回復は一時的だろう。

 「お詫びセール」とやらが売上を回復させたのは、「10%以上の値引き」だろう。「多くの消費者はその姿勢を評価し、来場者の数は同社の予想を超えた」のではなく、安かったから来たのだろう。期間限定の値引き販売は期間終了後の需要の先取り効果がある。なので、値戻しをした後も含めて評価する必要がある。値引き販売をするともとに戻すと割高に見える。値引き後の価格が魅力的であればあるほど、値戻し後の割高感は大きい。災いが転じて福になったかどうかは来季の決算(2017年3月決算)を見なければわからないだろう。

 事の発端は社内の権力争いだが、その元となった売上の低下傾向だろう。大塚家具が提供するものが消費者の望むものと乖離してしまったために発生した売上の低下傾向を食い止められない限り、「災い転じて福となす」ことができたとは言えない。災いの火元は断ててないのだから。むしろ、「大塚家具」という看板が邪魔なのではないだろうか。高級家具とかいうものがライフスタイルと合わなくなってしまったのだ。実質所得の低下傾向の中で、新婚家庭や新築だからといって大きな家具を買い揃えるようなことはできなくなった。

 自分には大塚家具は寂れたシャッター商店街にある仏壇屋のイメージだ。無くなっても困らないし、閉店後に通りかかっても「ここ何が入っとったかな?」という程度の存在感でしかない。

大塚家具に学ぶ「災い転じて福となす」方法
 足元の同社業績が持ち直している。お家騒動の後、実施した「お詫びセール」が好調だったこともあり、今年5月の売り上げは昨年の1.7倍に上った。それに伴い、今年6月の中間期の見通しを1億2600万円の赤字から、3億5900万円の黒字に上方修正した。

 業績回復の背景には、久美子社長の“親しみやすい店作り”の経営方針が一般消費者に受け入れられたことがある。それに加えて、反省の趣旨で行った、「お詫びセール」のイメージが消費者心理にアピールした面が大きい。

 特に、久美子社長自らが取った、セールの店舗でガーベラの花を顧客に手渡すという行動に、消費者の多くは相応の誠意を感じたのだろう。その意味では、経営者自身が責任逃れをしない、真摯なスタンスを評価したと言える。

 株主総会で勝利した久美子社長は、業績の回復に向けて迅速な手を打った。騒々しい親子喧嘩の副産物としてマスコミの注目度が高まった間に、「お詫びセール」と称して大規模なフェアを企画した。

 セール初日には、久美子社長自身が来場者に生花を手渡す演出で消費者に対する誠意を表現した。販売価格についても、ご迷惑の代償として10%以上の値引きを行った。多くの消費者はその姿勢を評価し、来場者の数は同社の予想を超えた。

「お詫びセール」で成功を収めた同社は、積極的にテレビのコマーシャルを使ってさらなる知名度アップに乗り出した。それと同時に、久美子社長は同社のロゴを、それまでのごついイメージから女性に親しみやすいものにかえ、企業イメージの一新を図った。

 さらに、家具のリユース分野への積極的な展開を考案し、他社で購入した家具を最高10万円で下取りすることを発表した。下取りした家具は、同社の専門家が修理をするなどして中古品として売り出すという。

 こうした一連の久美子社長の戦略には、親子喧嘩で社会から注目されたことを逆手にとって、むしろその注目度の高い間に、今までとは違う、有効なマーケティング戦略を打ち出そうという狙いがある。

 今までのところ久美子社長の戦略は、多くの専門家の予想以上の成果を上げている。当初懸念された同社の業績は予想以上の速度で回復し、親子喧嘩が表面化した当時、1000円を下回る水準だった株価は足元で2000円程度まで上昇している。

 そうした成功の背景には、久美子社長の“禍転じて福にする”したたかさと、しっかりしたマーケティング思考があったと考えるべきだ。

 大塚家具の親子喧嘩は、決して褒められるものではない。本来、そうした騒ぎの発生を防ぐことが企業経営者としての機能だ。

 しかし同社の事例には、想定外のことが発生した場合、その対処方法として参考にすべきポイントがあるのも事実だ。その一つは、顧客優先の姿勢を明確に示したことだ。

 株主総会で勝った久美子社長は、その場で“ノーサイド=敵味方なし”を宣言し、「お客様に迷惑をかけた」との姿勢を鮮明にした。想定外の事態に対して、経営者自身が逃げることなく、真摯に事態に向き合う素直なスタンスを示した。

 多くの消費者は、その姿勢に共感を覚えたのだろう。その結果が、「お詫びセール」の予想を上回る反応となって表れた。経営者は企業の最高責任者で、何があっても逃げ出すことはできない。難事であればあるときこそ、経営者自身がそれに立ち向かう姿勢を示さなければならない。

 もう一つは、しっかりしたマーケティングの戦略があったことだ。目を付けたのは注目度だ。久美子社長は、良くも悪くも、社会の注目度が高い間に積極的なセールを企画した。

 家具という相対的に成熟した製品群を扱うビジネスで、しかもニトリやイケアなど国内外のライバルがしのぎを削る業界、その中で当時の同社がライバルを凌駕できる要素は、恐らく一時的とも思える注目度だった。

 久美子社長は、一時的な優位性を活用することを躊躇しなかった。大規模なセールを企画し、ネーミングを「お詫びセール」とした。注目度を生かす一方、同社として反省を表明することを忘れなかった。

 消費者の初動は久美子社長の試みへの賛同だった。それが、業績回復に結びついた。まさに、同社にとっての禍は福に変わった。

 しかし、親子喧嘩は法廷闘争として残っている。また、大塚家具を取り巻く状況にも大きな変化はない。今後、久美子社長がどのような経営手腕を示すか、楽しみにして見たいものだ。

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