シャープ、リストラ拡大に見るゆでガエル

 二つ目の記事は昨年の11月に書かれた記事だ。一つ目の記事を読んだ後で、二つ目の記事を読むと味わい深い。

 数カ月後にリストラが始まるような追い詰められた状態なのに、危機感がなくなっているなんて考えにくいが、中に身をおいたらそんなものなのかもしれない。というか、そういう状態をヒシヒシと感じている・・・

 ただ、これは一企業だけの問題ではなく国や地球文明でもだが・・・

シャープ、2千億円支援要請へ リストラ拡大で上積み:朝日新聞デジタル
経営再建中のシャープは、銀行に求める資本支援の規模を2千億円に拡大する方針を固めた。太陽電池など不採算事業の縮小といったリストラで費用がかさみ財務が悪化するためで、主力取引銀行のみずほ、三菱東京UFJ両銀行と16日にも詰めの協議に入る。

 シャープの2015年3月期の純損益は、リストラ費用によって2千億円規模の赤字に陥る見通しだ。資本支援は融資の一部を株式に換える手法を想定している。これまで1500億円規模で調整していたが、リストラの拡大などを受けて上積みする方針だ。主力2行が資金を出す投資ファンドにも、250億円程度の出資を求める。

 シャープが検討している再建案は、不採算事業の縮小とともに、人件費などの経費を減らして利益が出やすい体質にすることが中心だ。さらに銀行側は、主力の液晶事業が投資の大きさのわりに値下がりが激しく収益が悪化しているため、より踏み込んだ再建計画づくりを求めている。

 こうなると負のスパイラルだなぁ。この時点では、数カ月後にまたリストラが行われるとは思っていなかったのだろう。

シャープに改革疲れ? 希薄化する危機感…社員にしみつく“カリスマ亡霊” – SankeiBiz(サンケイビズ)

企業風土改革が正念場を迎え、危機感を共有するため社員にメッセージを送ったシャープの高橋興三社長  経営再建中のシャープの企業風土改革が正念場を迎えている。平成26年3月連結決算で黒字転換し、9月に最大の課題だった1000億円の社債の返済も乗り切ったことで、社内の危機感が緩んできているのだという。高橋興三社長は今月に入り、「改革疲れや先祖帰りを強く懸念している」と訴える署名入りメッセージを各事業所に送った。まもなく発表の26年7~9月期の業績について「大変な苦戦を強いられた」と打ち明け、部門同士のいがみ合いや指示待ちのヒラメ社員が再び目立ってきた社内の引き締めに躍起だ。(松岡達郎)

 急激に悪化

 「危機を乗り切ったと思っている方(社員)がいたら直ちに考えを改めてください」

 高橋社長はメッセージでこう強調した。

 確かに、金融機関への公約ともいえる中期経営計画(3年)の1年目にあたる26年3月期連結決算では最終損益は115億円の黒字(前期は5453億円の赤字)を計上し、社内外に復活を印象づけていた。

 続く26年4~6月期連結決算は最終損益が17億円だった。欧州での太陽光発電事業からの撤退に伴う損失処理が響いたが、前年同期(179億円の赤字)に比べると赤字幅が縮小。高橋社長はメッセージで「期待に何とか応えられる内容」と一定の評価を下した。

 ところが、まもなく発表される26年7~9月期連結決算については「大変な苦戦を強いられた」と厳しい言葉で表現し、中期経営計画の後半戦に入った10月以降については「ひとつの事業部のわずかなほころびが全社に影響しかねない『薄氷』とも言える状況」と危機感をあらわにする。

 メッセージでは、一説では経営危機に陥った企業で短期の「V字回復」を果たす企業は25%にとどまり、残りの75%は「緩やかな回復」さえままならない状況に追い込まれると指摘。その上で「われわれはどちらに向かうのか岐路にたたされている。これが2年目」と訴える。

 高橋社長は「経営危機に陥った会社はどこも1年目はリストラ効果で乗り切れる。それがなくなる2年目こそ勝負」と周囲によく語っている。その正念場ともいえる時期に緩んでいる場合ではないというのだ。

 シャープの改革対象

 昨年6月に就任した高橋社長は、会見で「社員が自分で判断して自分でチャレンジし、上からの指示を待たない。そういう企業風土に変えたい」と述べ、「かえる」運動と呼ぶ企業風土改革に着手した。

 「けったいな文化を変える」と繰り返し、社内では相手を役職ではなく、「○○」さんと呼称する「さん付け運動」の推進を呼びかけ、現場の意見を上司や経営トップに直言できる風通しの良いフラットな組織づくりに取り組んだ。

 高橋社長が「けったいな文化」と呼ぶ改革の対象とは、上意下達の強すぎた企業風土だ。

 もともと同族経営が続いてきたこともあり、社内にワンマン社長の判断に疑問を持ったり、水を差すような情報を報告できる雰囲気はなかったという。

 「液晶のシャープ」という一時代を築いた4代目の町田勝彦氏(現特別顧問)の社長時代には経営トップのカリスマ化に拍車がかかった。後継社長の片山幹雄氏(現日本電産副会長)も液晶事業への巨額投資に突き進んだが、世界的な薄型テレビの需要減など情勢が変化しても計画の中止・変更などを求める意見はなかったという。逆にアイデアマンで明確なビジョンを示す片山氏の指示を待つ傾向が強まったといわれる。

 このため、シャープには社員に指示待ち傾向が強まり、経営トップの意向を背景にした管理部門が事業部門の方針に介入してくるケースも横行したとされる。

 悩ましい亡霊

 高橋社長がメッセージで懸念した改革疲れや先祖帰りとは-。

 実は「片山氏の社長時代は明確なビジョンと会社の将来像を示してくれた」と懐かしがる社員が少なくないという。

 片山氏は8月末で退社するまでは巨額赤字を招いた時代の経営トップだったうえ、社長退任後も経営に介入し続けたとして“ゾンビ経営者”と呼ばれていた1人だが、関係者は「明確なビジョンを示して『ついてこい』と引っ張る片山氏に慣れた社員には、全員で決めようとする高橋社長の姿勢を物足りなく感じることがあるのかもしれない」と解説する。

 さらに、危機意識が希薄化した結果、本社の管理部門が液晶事業部門を「巨額赤字を招いた元凶」と会議などで一方的にやり玉に上げなど社内の軋轢(あつれき)も目立っているといい、高橋社長はメッセージで「社内で『綱引き』をしている余裕などない」と呼びかけた。

 26年7~9月期に大変な苦戦を強いられ、中期経営計画の後半戦に薄氷の状態で突入したシャープ。中国のスマートフォンメーカーへの顧客開拓が好調な液晶パネル事業などの健闘をよそに、高橋社長を悩ましているのは、社員の意識にしみついているカリスマ経営者時代の“亡霊”といえそうだ。

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