小径車の意外な弱点

 「意外」というタイトルを付けたが、小径車に乗っている人ならとっくの昔から知っていることだろうが、小径車が身近になって初めて知ったので書き留めておく。

 息子と京都の芹生峠を南から登った。息子は GIOS feluca。ジオスブルーのクロモリフレームが印象的なミニベロだ。ドロップハンドルにロードコンポで武装したそれは平地ではロードに乗った自分より速い(エンジンの差を機材のハンデで取り返せないくらいしか機材の差が小さい)。しかし、芹生峠で意外な弱点を露呈した。

 息子は登りでも自分よりパワーが有るので、マイペースで自分を置いて先に行ってしまった。が、残り1kmくらいのところで自転車を降りて押して登っていた。あとで聞いたら、「急な坂で前輪が浮き上がるから力入れられへん」ということだった。

 そういえば、娘の Bianchi を借りた時に急な上りになっている箇所を低いギアで登ろうとして前輪が浮いて慌てたことがあった。重心と力点(リアホイールのシャフト)の距離が下に大きく離れているせいだろう。なので、強い力でペダルを押すと前輪に対して前方だけでなく上向きの力が発生するのだろう。

小径車と700cとの重心位置とベクトルの関係。ペダルを踏むことで発生したタイヤの回転力が地面との摩擦で後ろ向きの力を発生させる。その反作用を受け止めるシャフトがフレームに固定されているのでフレームが前向きの力を得る。このフレームを押す力が重心に対して大きく下にあるために前輪が浮く。
小径車と700cとの重心位置とベクトルの関係。ペダルを踏むことで発生したタイヤの回転力が地面との摩擦で後ろ向きの力を発生させる。その反作用を受け止めるシャフトがフレームに固定されているのでフレームが前向きの力を得る。このフレームを押す力が重心に対して大きく下にあるために前輪が浮く。

 また、フレームジオメトリーの関係もあるが、GIOS のフレームはチェーンステー(BBから後輪のシャフトに伸びる棒)が水平に近いのに対して、ロードのフレームではBBはホイールのシャフトより下に位置している。ダンシングで漕いでいる時には体重の大半がペダルに乗る。フレーム対する力としてはBB位置に重心が下がる。この時、ロードはどんなに強く漕いでも前輪に対して浮力発生しない(むしろ押さえつける力が発生する)。これに対して小径車では浮力は発生しないとしても抑える力は全くない。平地ではこれでも問題はないが、急な坂になると鉛直方向との角度差が浮力発生の原因になる。

 チェーンステーの角度の違いが登り・ダンシング時の浮力の違いになるのだろう。

写真を見ていたらシートとリアのシャフトの距離が非常に近いことに気づいた。シッティング状態の場合だが、これも前輪が浮きやすいことの原因になっていそうだ。これは、シートがシャフトと近いことによるのか重心とシャフトが近いことによると考えるべきかは分からない(同じことかもしれない)。

 あと一つは荒れた路面に対する弱さ。芹生峠は簡易舗装が剥がれた場所がそここにあり、というよりほとんどない連続していて常に2cm〜3cmくらいの 凸凹を乗り越えて登らなければならなかった。ここで、段差を越える抵抗が厳しかったようだ。

 MTBが29インチ化されたのは、凸凹を乗り越える時に前方への慣性モーメントを上向きに変えられてロスすることを防ぐためだった。それの逆で、タイヤ径が小さくなることで700cよりも影響が大きいのだろう。このため、小径車が太いタイヤを履いていることが多いのは、路面の凸凹に対する衝撃吸収性能をタイヤでカバーする目的があるのだろう(これに対するBD-1の回答が全後輪サス付きだったが)。

 いやぁ、自転車は奥が深い。楽しい。

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