Fit late 2006 のインパネにダメだし又は温度計の不在に見る設計思想

注:これはFit 1.3A late 2006 を題材に自動車のインパネについて考えたものです。その後のモデルで改良されているかもしれません。

 インパネは運転者に情報を提供するための貴重なスペースだ。ハンドルから見えるインパネの物理的面積は限られている。ここをどう使うかはデザイナーというかメーカーの UI に対する考え方をも表現していると思う。先のエントリでは大好きな 145 のインパネとの比較だったので、ここでは Fit 2006 のインパネについて自分が問題と感じる点を整理したい。まず、実際のインパネの写真を見ていただきたい。
fit day mode

 最大の問題は、無駄な空白だ。インパネに表示すべき情報は増えた。三十数年前に自分が免許を取った当時の車(日産サニー)と比較すると、ABS、エアバッグ、イモビライザー、パワステ、変速状態、シートベルト未装着警告、半ドア警告といったランプが増えた。無駄な空白を置く余裕はない。にも関わらず、このインパネには不要部分が非常に多い。
fit-muda 右図の薄紫の部分がデットスペースだ。運転者に対して何等情報を適用していない。実際の情報を表示
するための要素を並べる有効面積を大幅に狭めてしまっている。

 上の写真を見れば分かるだろうが、筒の奥にパネルを置くようなレイアウトにしたため、筒の側面も斜めから見るときの無駄スペースになっている。また、助手席から見えない。

 有効面積が減ったためにインジケータランプの配置にしわ寄せがいっている。イモビライザーのランプがタコメーターのペインにあるのは意味不明だ。距離計が速度計のペインにないのも、温度計がないのも不満だ。今の状態でも燃料計を小さくし、低温・高温警告ランプを省けば温度計くらい置くスペースはできるはずだ。残量警告ランプがあるのだから燃料計など細かく刻む必要は無いのだから。

 個人的には、何で円筒状の3連メーターにしたのか分からない。Fit をシンボライズする図形として円があるのならともかく、そんなものはない。メーターとメーターの間に障害物を置く意味が分からない。そんな仕切りを置いて独立性を持たせることに何の意味もない。インジケータの性格によって整理するなら 145 のように、起動時にチェックするためのランプをメーターと別に並べればいい。それだけの余白は有るのだから。そして、メーター類を一つのペインに並べて、どうしても仕切りを入れたければ線でも入れればいい。そんなものが不要なことは 145 のインパネが示すとおりだが。

温度計

 Fit2006には温度計がない。そういえば、親の車もそうだった。Ipsum、Mark Xと乗り継いで先日 Ractis になったが、Ipsum 以降には温度計が無かったような気がする。始動時に青いランプが灯っているが高温警告のランプは見たことがない。「ランプが付いていなければ大丈夫だから気にするな」ということだろうか。

 145 の場合はかなり特殊だが、温度計はかなり意識していた。夏に平均速度が落ちると温度計の針が跳ね上がるからだ。渋滞では、エアコンを切るくらいしかできないが判断の材料にはなる。渋滞で水温が100度を超えたことはあったが、針がそれ以上動かなかったので、慌てずに済んだ。温度計を振り切る(120度)ようならすぐに止めたはずだ。その判断ができたのは温度計があるからだ。

 高温警告灯が突然灯ったらパニックになってしまうのではないか。それが付くのが、このまま大人しく走って様子を見るべきか、すぐにでも路肩に寄せてアイドリングした方がいいのかが分からない。

 場所がないのなら仕方が無いと思える。しかし、Fitのインパネには無駄な余白がある。燃料計もムダに大きい。燃料警告灯があるのだ距離で給油タイミングを計算している。ギリギリまで乗った経験で「145 なら満タンから650kmくらいは余裕」というのは誰でも持っているだろう。少なくとも、リアルタイムでフィードバックが必要なものではない。それに対して温度計はリアルタイムでなければ意味がない。人間に例えるなら、水温計は体温計で、燃費計は体重計だ。

 小さなことだが、「ドライバーと車とのコミュニケーション」をデザイナー(仕様作成者)がどう考えているかが現れていると思う。因みに、2014年モデルの右ペインには燃費計という訳の分からないものが付いている(温度計はない)。

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