Kindle Fire HDX のオンラインサポートは画期的?

kindle-mayday  下の記事では、簡単に押せるボタンによりいたずらや、悪意はなくても手離れの悪いユーザの対応でサポートコストが大きく増えるのではと危惧している(あるいは、ユーザーサポートが相対的に不足して待ち時間が大幅に増えて Amazon のファンを失うことになることを)。

Apple の電話サポートが購入後 90 日しかないのと比較すると天と地ほどの差だ。先日 Amazon でコンビニ受け取りのメールをスパムとして削除してしまった時にチャットで再送してもらって助かった。リアルタイムチャットで10分近くかかった。こんなことは、これまでの購入経験で初めてだし、今後もあまりないとは思うが、この一件だけ考えれば赤字だ(2,000円程度の商品でサポートは15分程度かかった)。

 しかし、Amazon は、自分の例でも分かるように、現状でもサポートを保有している。サポートのキャパシティの増加と Kindle Fire HDX による売上の増加とのバランスが取れていれば問題はない。Amazon の経営陣は問題なしと考えたのだ。

 Kindle Fire HDX は Amazon のアカウントと深く結びついている。クレジットカード番号も分かっているし、少なくとも端末を買ったアカウントは掴んでいる。発送先の住所も持っている。品物を受け取るのに使っている住所だから免許証や住民票の住所よりはるかに信頼性が高い。これらを晒している相手に猥褻画像を送りつけるアホは多くないだろう。言葉は当然録音されている。こちらの姿は相手に送らないと言っているが、トラブル時に遠隔操作でフロントカメラの操作ができないとは思わない。

 また、従来のサポートの経験から、統計的にユーザーサポートにどの程度のリソースが必要かは掴んでいるのだろう。手離れの悪い(悪意のない)ユーザにサポートがどの程度拘束されているかは、これまでの Kindl シリーズでよく分かっている。そのうえで、HDX の画面共有やリアルタイム音声チャットのほうが効率がいいと踏んだのだろう。

 先日、親のPCのセットアップをした。その後電話があって(片道2時間くらい離れている)、「パソコンを移動したら壊れて立ち上がらん」と言ってきた。ケーブルの接続ミスだと思って見なおすように言っても直らない。本体の電源LEDが光っていることが分かった時に、ふと「じゃ、モニタは?」と気づいた。モニタの電源を入れてなかったのだ(デスクトップ機)。パソコンが起動していないのではなく持ちたの電源が入っていなくて表示されていなかっただけだ。しかし、モニタに何も映らなかったらパソコンが壊れたという説明をするのがサポートを必要とする人たちだ。

 これらを考えると、電話で拘束されるより端末経由のほうが拘束される時間が短ければメリットはあると思われる。実際、デバイスのサポートで一番時間を取られるのが端末の状態を把握することだからだ。端末の電源が入らないとかネットに繋がらないという質問は Mayday では存在しない。端末の電源が入ってネットワークにつながっているから Mayday のサポートが受けられるのだから。そして、その状態でリモートで状態が分かれば従来より拘束時間は短くなると予想したのだろう。

 ただ、これを真似られる企業はほとんどないだろう。ハードと通販を一社で持っているからこそできる技だ。

メーデー!メーデー!Amazonのオンデマンドサポートはスケーリングの悪夢を呼ぶかもしれない | TechCrunch Japan

問題をGoogleするよりテクニカルサポートに電話した方が簡単だと何が起きるか? Amazonは、新しいタブレットKindle Fire HDXの持ち主が、同社のオンテマンド・ビデオ・カスタマーサポート機能をどれだけ使うかによっては、その答えが高価なものになることを発見するかもしれない。Amazon自身がどう行動するかによっても。

Mayday は、Kindle HDXのクイック設定メニューのトップにあるボタンだ。24時間年中無休で、サポート・エージェントが映しだされた小さなビデオウィンドウがポップアップする。相手からこちらは見えないが、声を聞き、しゃべりかけ、画面に描いて指示することもできる。画面を制御して助けてくれることさえ可能だ。

Farhad Manjooが言うように、Maydayは最大の技術的問題の一つを解決することはできないかもしれない。ネットがつながらない時だ。それでも、老若を問わず始終困惑する人たちから来る大量の問い合わせに答えなければならないことに変わりない。Maydayを利用しているところのビデオはここで見られる。

もしAmazonがMaydayをスケーリングできたら、それは驚くべきことだ。多くの人々のテクノロジー生活を楽にするという意味でも、並ひ外れたロジスティックの偉業という意味でも。これは、高付加価値サービスの業界ベンチマークになるかもしれない。是非成功してもらいたいものだ。

サポート乱用のハードルがない

今日、多くの企業がオンラインサポートに力を注いでいるが、人間に構まってもらいたければ、それなりの努力が必要だ。

Appleのジーニアスバーを見てほしい。予約を取り、小売店に出向き、時間通りに現れなくてはならない.これはユーザーにとって障壁であると同時に、本当に手助けが必要な時のための選択肢を与えているこのにもなる。

電話によるカスタマーサポートでは、電話番号を調べ、音声ガイダンスをくぐり抜け、待たされ、何をしてほしいかを、事実上計器飛行しているサポート担当者に説明しなくてはならない。

このあらゆる摩擦が悪悪悪夢だ。ではなぜ存在するのか? 費用効率がいいからだ。

オンデマンドでデバイスと直接つながるサポート要員が山ほどいることは素晴らしい・・・かつAmazonにとって非常に高くつく可能性がある。Maydayはこの端末の大きなセールスポイントになり、返品の損失を防ぐことで自らペイするかもしれない。しかし、人々があのボタンを必要以上に押しまくるかどうかは、ギャンブルだ。

Mayday Button問題は、Amazonがどこまでそのビジョンを妥協できるかだ。同社は記者団に対して、Maydayが毎回15秒以内にユーザーがサポートを受けられるようにしたいと語った。忙しいクリスマスの朝にも。回数の制限もなく。Amazon CEOのJeff BezosはMaydayについて、同社の他のコールセンターと同じように機能すると本誌に語った。結局のところ、この会社はEコマースのスケーリングにおいて相当数のミラクルを演じてきている。

それでもしかし、Maydayサービスの乱用を防ぐための但し書きを入れておく必要はあるかもしれない。寂しいからMaydayしたり、ネコの写真を見せたくてMaydayしたりする人は切り捨てる必要がある。猥褻画像を見せたり言葉のテロリズムを仕掛ける輩は、永久追放する必要があるかもしれない。しかし、ひたすら怠惰なユーザーが、毎日ギリギリまともな質問をし続けたらどうするだろう。Amazonはどこに線を引くかを決めなくてはならない。

Maydayのスケーリングにおけるこの根本的問題は、現在AmazonにはアクティブなKindleユーザーが、Benedict Evansが想像するほど膨大にはいないことを示しているのかもしれない。AmazonはKindleの売上とアクティブ利用者数に関して秘密主義で知られているので、HDX端末がどの程度売れ、サポートが必要なのかわれわれにはわからない。

しかし、もしこのすべてを成功させ、われわれをサポート電話メニュー地獄から救える人間がいるとすれば、それはBezosだろう。法外な費用のかかるファンタジーをギリギリのリアリティーに変えることは、彼の十八番だ。そしてもし、問題がMaydayのユーザー当たり質問数ではなく、Kindle HDXがたくさん売れたためであれば、それは悪い話ではない。Microsoft Surfaceに聞いてみるといい。

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