多くのレビュー記事ではキックスタンド+軽量キーボードを持ち上げているが(キーボードもそれほど軽くはないが)、iPad 3 を Logicool Ultrathin bluetooth keyboard cover (今ならアマゾンでなんと5881円)と使った経験から類推すれば、Surface のこの構造はモバイルで安定の悪い場所でのタイピングには向かないと感じていた。Ultrathin を始めとして多くのタブレット用キーボードの多くがキーボード上にスリットを設けてタブレットを置くようにしているか考えれば分かる。Ultrathin のような構造なら膝の上のような所に置いた時に硬いキーボードと一体感があり重量物が中心に近い位置にあるので安定が良い。また、奥行きがキーボード(タブレットの奥行き)と大差がないので、ノートPCよりも使い易い。
Surface のキーボードはどちらも無理だ。軽量でキーボードが付いた Windows ノートPC の代替品として期待されているのに、一番能力を発揮しそうなシーンで使いにくいのだ。この点にツッコミをいれた記事を初めて読んだ。
後、この記事では触れていないが、Surface の重量はノートPCにたいしてアドバンテージはない。軽量の RT ですらキーボードを加えれば SONY VAIO PRO 11 にたいしてアドバンテージはない。まして、Pro なんてキーボードを足したら 1.2 kg だ。そう考えると Surface のアドバンテージは「Offce 込みの価格」しかない。
ただ、この機材を自腹で買っていないことについて、旅費や参加費のほうが多いことを根拠に、「只で貰ったものじゃない」と書かれているが、これは見苦しい。旅費や参加費は現金で払ったのでそちらが減額されないしご自身で支払われたことも事実だろうが、それにより記事を書く際の投資が不要になったことは事実だし、それがなければこの記事の原稿料は入らなかっただろう。
それ以前に、ライターが自腹で買ったというのと一般ブロガーが自腹で買うのとは訳が違う。金持ちかどうかという意味ではなく、回収可能性の問題だ。ライターは掲載される(原稿料が入る)ことを前提に買うだろう(当然だ)。だから10万円のノートPCを買っても、記事を何本か書けば元は取れる。個人営業なら経費に計上も出来るだろう。
しかし、一般人は違う。エントリーを書いてアフィリエイトリンクを張っても年間で数百円にしかならない。それを使って会社の仕事をしても収入は一緒だ。また、数年間は買い替えはしない。つまり、一台の選択の重要性がぜんぜん違うのだ。ライターは話題になる機種が出るまでのつなぎでしかない。その程度の薄っぺらい感想でしかないと思って読むのが正解だろう。
Surface ProはRTと比べてどこが魅力?《塩田紳二「モバイルトレンド」》
バッテリー駆動時間とスタンドの安定性全体としてProは悪くない出来なのですが、バッテリー駆動時間が短く、バッテリー交換もできない点、そして、どうしても買いたくなるような強力な理由が見当たらないところが欠点と言えば欠点です。筆者のようにWindowsそのものを評価するというのであれば、リファレンスとして重要な存在なのですが、内蔵スタンドとカバーと一体になったキーボードの組み合わせによる2in1構成ぐらいしか特徴がありません。このカバーとキーボードが一体になっているというのは「メリット」ではあります。クラムシェル構造になるキーボード分離型のタブレット(俗に2-in-1などといいます)は、バランスを取るためにキーボード部にムダに大きなバッテリーが含まれていて、キーボードを付けて持ち歩くときにはクラムシェル型でしかなく、重量もほとんど変わりません。また、キーボード部がスライドして液晶部分が立ち上がったり、後ろに反り返ってタブレットになるなどの「クラムシェル変形型」のタブレットもやはり、ヒンジ部などを頑丈に作る必要から、重量が増加しがちです。
これに対してProは、本体にスタンドを内蔵しているため、キーボードは液晶カバー兼用で軽いものになっています。なので、キーボードと一緒に持ち歩いても重量の増加はわずかです。ただ、一般的なノートパソコンが8時間以上のバッテリー駆動時間がある最近の傾向の中では、ちょっとバッテリー駆動時間が短すぎます。こと、日本国内では、最低でも8時間で、10数時間駆動という機種もあり、バッテリー駆動時間だけで判断されてしまいそうです。また、膝の上に直接置いて使おうとすると、スタンドが少し不安定で、ちょっとした動きでSurface自体がバランスを崩して落ちそうになります。キーボード側が軽くなっていて重心が高いところにあるからでしょう。特に液晶側から背面に向かう力がかかるとスタンドが畳まれて簡単に倒れてしまいます。また、机のような平面でしっかりした場所以外、例えば、飛行機の座席にある折りたたみのテーブルのようなところで、キーボードの手前などがテーブルからはみ出してしまうような配置では、キーボード打鍵やタッチパッド操作時に安定感を感じられず、大きなストレスを感じてしまいます(膝の上の方がマシな感じがします)。アイデアとしては悪くないのですが、メールに返事を書いたり、検索キーワードを入れたりする程度のカジュアルな利用には問題ないものの、長文のレポートを作成するときのように集中してキー入力を行う利用方法では、がっしりとした机が必要と環境を選んでしまいます。利用方法によって相性の悪さを感じる人も少なくないと思われます。大半が重しとなるバッテリーを持つキーボード分離型の2in1タブレットに比べると、本体組み込みのスタンドと軽量なカバー兼用のキーボードというのは構成として「理論的な正しさ」を感じる構造なのですが、スタンドにもう一工夫必要な感じです。