iPad の販売シェア首位陥落と統計の罠

 日本ローカルの 12 月の資料。しかも、全体の 40% しか調べられていないとか・・・Amazon や SAMSUNG といった世界以上でのビッグプレーヤーが入っていないので世界市場でどうなのかはさっぱりわからない。

 この結果は Apple より Android 端末を出している日本メーカーにとって脅威だろう。この2社で 85% 近くシェアを持っているということは、iPad のシェアが低下しても日本メーカーの存在感は相変わらずだということだ。Apple が昨年から 16% 落としたシェアのほとんどを Google が奪ったということだ。

 日本メーカーの出している端末については、事ある毎にダメ出しをしてきたが、日本市場ですらコストパフォーマンスの悪さが気づかれてしまったのだろう。

 ただ、この表は日本市場の特殊性を見ることはできる。世界市場で iPad のシェアを食っている GALAXY tab のシェアがほとんど無い。日本人の嫌韓意識と Google 信仰により Android 市場内での評価につながっているのかもしれない。Amazon と同じように調査対象から外れているだけかもしれないが。

 問題は、この資料が全体の 40% しか網羅していないという点だ。均質的(ランダム)な母集団から無作為抽出の 40% なら統計的に有意といえるが、データが取れる流通経路だけのデータが全体のおよそ(全体が分かっていないのだから本当にそうなのかどうなのかは全くわからないが)40% というのとでは全く異なる。

 例えば、ハンバーガーチェーンでの売れ筋商品の調査をするときに 60% を占めるチェーン店をはずして調べて、一般人の嗜好が分かるだろうか?一般人の嗜好を調べるなら、ハンバーガーチェーンで買い物する人を母集団にしなければならない。これが基本だ。BNCBCN の調査はこの視点が欠けている。この調査でわかるのはBNCの調査母集団のことで、市場全体ではない。

 このページにはamazonについてはただし書はあるが、Apple についてのただし書がない。Apple の直販ルートのデータが載っていないのではないだろうか。Googleにしても Google play からの購入数量はあがっていないし、それ以外のメーカーについても Amazonからの購入はカウントされない。価格ドットコムの上位に来るような零細の通販業者も対象外だろう。ヲタな端末の大半は通販で買われることを勘案すると、BNCのPCランキングで Ultrabook や VLCU などが2スピンドルノートに勝てない理由がここにあるのではないだろうか。

 一番問題なのは BNCBCN ではない。BNCBCN の調査では市場の全体傾向を見ることは不可能だが、BNCは限界について自ら説明を行なっている。サンプリングがPOSでしかないことや Kindle fire を入れていないことに対する断りもある。問題なのは、孫引きする一般マスコミだ。条件付きの部分調査でしか無いものを取り上げるから実情と異なる情報が社会に流布されてしまう。孫引きするならちゃんとサンプリング条件や限界についても引用すべきだ。

 おそらく、記事を書くライター(記者?)に統計を扱うリテラシーがないのだろう。そして、チェックすべき責任者にも。さらに、記事を読む読者にもだ(ここが一番問題かも)。

BCN、2012年の年末商戦を分析、タブレット端末で波乱

20130117bcn_5 年末に向けてWindows 8搭載タブレット端末が発売されたほか、家電量販店では10月2日に発売されたASUS/GoogleのAndroid搭載7インチタブレット端末「Nexus 7」が、タブレット市場を盛り上げた。さらに「Nexus 7」は、「iPad超え」まで達成した。

 タブレット端末といえば、これまでアップルの「iPad」シリーズが市場を独占していた。販売台数で、今年3月から4か月連続で6割を超えるシェアを獲得。常に市場の半分以上を占めていた。ところが「Nexus 7」が発売した10月は、39.6%までに落としている。

 代わりに、9月まで1割以下だったASUSがシェアを伸ばしはじめ、10月36.5%、11月32.4%と好調に推移。12月には44.4%を獲得し、40.1%のアップルを抜いて1位に躍り出た。アップルがタブレット端末で他社に抜かれるのは、初めてのことだ。

 道越アナリストは、「タブレット端末は秋口から非常に伸びている。パソコンの使い方のなかでも、情報消費型の用途に関してはタブレット端末やスマートフォンに分がある。これからは、パソコンならではの使い方・機能などを見直し、存在意義の再定義が必要になるだろう」と話した。

*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。

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