飢えに狂った野獣は河を渡らん 大部分の陣営はヒステルに敵対せん かくてゲルマンの子は一切の掟を破り 勝者は鉄の檻を引き出さん これは第二巻第二十四番の詩であるが、申すまでもなくドイツの敗北を予言している。「野獣」とは、戦争に負けたみじめな民衆である。敗色が濃くなってくると、ナチスの軍隊は戦時国際公法を無視して「一切の掟を破り」、ユダヤ人虐殺などの計画を一段と強化し出すのだ。やがて連合軍は勝利すると、ナチスの戦犯を逮捕し、ニュールンベルク裁判で彼らに苛酷な刑を課する。「鉄の檻」とは、この意味であろう。 このように、ノストラダムスのめざましい予言は、第一次大戦から第二次大戦終結までの、数多くの二十世紀のエピソードを歴史の流れに沿って、忠実になぞっているらしいことが分るだろう。もちろん、ここに引用したエピソードは、そのうちのごく限られた一部分であって、実際には、もっともっと沢山の四行詩が、さまざまな歴史の局面をそこに反映していることは、わざわざ断わるまでもあるまい。 :人物 :行為者 #ls2(妖人奇人館/ノストラダムスの予言)