ここで、処女王[[エリザベス>エリザベス一世]]を取り巻く幾人かの寵臣たちについて語ろう。

まず、[[エリザベス>エリザベス一世]]の即位当時から中年までの第一の寵臣であったレスター伯ロバート・ダッドリー。彼は、ヘンリー七世に憎まれて殺された大臣の孫に当たる。[[エリザベス>エリザベス一世]]と同年ということになっているが、生年は必ずしもはっきりしない。生まれた月日まで女王と同じだという説さえある。すでにエドワード四世*([[エリザベス>エリザベス一世]]の異母弟)時代から、この美少年は[[エリザベス>エリザベス一世]]の目にとまっていた。まだ少年ながら、その眉目《みめ》よきすがたに同年の少女は惚れ惚れとしたのである。

[[ロバート>ロバート・ダッドリー]]が父とともにロンドン塔に幽閉されていたとき、ちょど[[エリザベス>エリザベス一世]]自身も、仲のよくない[[姉の女王>メアリ一世]]のために塔に押しこめられていた。釈放された後、[[ロバート>ロバート・ダッドリー]]はフランスとの戦争で手柄を立て、[[エリザベス>エリザベス一世]]の即位と同時に主馬寮長官に任ぜられた。

[[エリザベス>エリザベス一世]]の彼に対する愛着は、だれの目にも明らかで、外国の使臣たちもみな、女王がいずれこの美青年と結婚するものと信じて疑わなかった。女王が[[ロバート>ロバート・ダッドリー]]の室を、自分の寝室の隣りに移したという噂さえあった[[ロバート>ロバート・ダッドリー]]の妻は乳癌を患っていて、女王は彼と結婚するのに彼女の死を待つばかりとも伝えられた。

ところが、[[ロバート>ロバート・ダッドリー]]の妻が[[不慮の過失>ロバート・ダッドリーの妻の死因]]であっけなく死んだ後も、女王は相変らず、結婚の意思を露ほども見せなかった。
#ls2(世界悪女物語/エリザベス女王)

*入力者注:河出文庫版ではエドワード四世となっているが、ヘンリー八世の子にエドワード四世と呼ばれる子はいない。エリザベス一世の異母兄弟で王位に就いたのは、エドワード六世とメアリ一世なので、ここではエドワード六世が正しいと思われる。

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