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*私生児として生まれ、母親の発狂で孤児院に、十四歳で最初の結婚をした

 貴婦人というものがいなくなってしまった二十世紀の、最後にして最大の女の神話は、おそらく、マリリン・モンローの神話ではないだろうか。

 およそ男性にして、[[モンロー>マリリン・モンロー]]がきらいだと公言してはばからない男性は、世界中に一人もいないのではなかろうかと思われる。しかも、ほとんどすべての男性が、[[モンロー>マリリン・モンロー]]について批評のようなことを口にするとき「女らしい」という言葉と、「可愛い」という言葉を使う。ウーマン・リブのお姉さんが何と言おうと、男性にとっての女の理想を知る上に、これらの言葉は、貴重な証言となるにちがいない。

「寝る時は何を着ている?」と聞かれ、「シャネルの五番」と答えた[[モンロー>マリリン・モンロー]]。「モンロー・ウォークは貴方の考案か?」と聞かれ、「生まれて六ヵ月目から、あんな歩き方をしていたわ」と答えた[[マリリン>マリリン・モンロー]]。彼女こそは、ハリウッドによってつくられ、ハリウッドによって殺された、文字通り最後の大スターであった。

 私生児として生まれ、七歳の時に母親が発狂し、孤児院に入れられ、十四歳で最初の結婚をしたというノーマ・ジーン・ベーカー([[モンロー>マリリン・モンロー]]の本名)は、この経歴によってもわかる通り、貧困と逆境のなかに育ったのである。この悲惨な幼年期が、彼女の心に、生涯にわたって消えない焼印を押したのだった。

 彼女の恐怖心、ノイローゼ、気まぐれ、わがまま、それに誰れかに愛されたい、保護されたいという激しい欲求は、ことごとく、この幼年期のトラウマ(心理学用語で、恐怖をともなう体験のこと)から由来しているのである。その上、ハリウッドの社会によって揉みくちゃにされた[[モンロー>マリリン・モンロー]]は、自分の手でつかみかけた平和な家庭の幸福を、幾度も犠牲にしなければならなかった。

#ls2(女のエピソード/マリリン・モンロー)

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