犯罪史上に名高い「切り裂きジャック」の名を、読者はご存じであろう。時代は英国ヴィクトリア朝の頃、霧ふかいロンドンの秋の貧民衝ホワイトチャペルで、一八八八年八月七日から十一月九日まで、連続的に六人の淫売婦が、いずれも下腹部を兇器で切り裂かれ、内臓をえぐり取られて無残に殺された。犯人は風のように姿をくらまし、ついに事件は迷宮入りとなった。ただ、犯人が警察によこした手紙にJack the Ripper(切り裂きジャック)と署名があり、ロンドン中を恐怖のどん底にたたき落したこの正体不明の名前が、年月とともに伝説的な光輝に包まれて


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