[[妖人奇人館]]
 人肉嗜食のことをアントロポファジー、あるいはカニバリズムという。この昔から知られている怖ろしい欲望には、いろんな動機があって、たとえば宗教や呪術の儀式の時に、信者が子供を殺して肉を食ったり、血を飲んだりするという習慣がある。肺結核や癩病をなおすのに、人間の肉を食えばよいという迷信もある。また未開民族が戦争や復讐で、敵を殺して食うのは、強い相手の力を自分の体内に取り入れ、自分のものにしようという気持からだろう。
 しかし、わたしがここで御紹介したいと思うのは、そんな種類の人肉嗜食ではなくて、エロティックな動機により、やむにやまれず人間の肉を食うという、いわば病理学的な範疇に属する人肉嗜食魔なのである。


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