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一七八九年、カリオストロは故郷のイタリアヘ帰り、ローマに落ちつく。すると、そこに、待っていたように不幸が持ちあがる。今まで彼の忠実な伴侶であった妻のロレンツァが、彼を裏切り、その筋に訴え出て、彼の身分を暴露してしまったのである。ローマ教皇庁の裁判所も、彼の身分に疑いをいだく。伯爵を名のり、民衆に畏敬され、諸国の宮廷に自由に出入りしていた高名な予言者は、じつは詐欺や文書偽造の前科のある、パレルモ生まれの一平民にすぎなかった! カリオストロは逮捕され、ローマのサン・タンジェロ城塞に幽閉される。 家宅捜索が行われ、彼の書いたものが発見されると、この怪しい予言者の危険思想は、いよいよ動かしがたいものとなった。彼は紙の上に、はっきり次のように書いていたのである、「ピオ六世は最後の法王となるであろう。ルイ十六世は最後の王となるであろう。フランス革命は予想以上に流血の惨事となるであろう」と。