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一説によれば、パラケルススは、この薔薇十字団の陰《かげ》の大立物であって、当時の社会に不満をいだく急進的なインテリ貴族や豪商のあいだに、大きな影響力をもっていた。一流の学者や芸術家も、彼には一目おいていた。たとえばバーゼルの著名な出版業者で、スイスの文芸復興の推進者であったヨハン・フローベンとか、名声並ぶ者なき当代の碩学エラスムスとかは、いずれもパラケルススに病気を直してもらってから、すっかり彼を信用してしまった連中である。 実際、パラケルススは『予測の書』というパンフレットのなかで、カトリック教会の没落や、フランス大革命を予言しているともいわれており、そんなわけで、彼が革命的な思想の持主であったことは、ほとんど確実に推測し得るのである。