こんなエピソードもある。ー彼が諸国を放浪中、ドイツインスブルックの近くで、貧しい農家の息子の病気を治療してやったことがあった。農家のおかみは喜んで、「何もございませんが、先生、じやがいもの揚げたのを召し上がってください」と言って、貧しい食卓をととのえ、医者を饗応した。この心からのご馳走に大そう感動して、パラケルススは、農家の暖炉の上に置いてあつた一本の火かき棒を取ると、剣の鍔の容器から黄色い軟膏を取り出して、この火かき棒に塗りつけたのである。すると、錆びた鉄の火かき棒が、たちまち黄金に一変してしまった。「さあ、これを持って金銀細工屋へ行きなさい。高く売れるよ」といって、パラケルススは飄然と農家を立ち去ったという。


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Last-modified: 2008-03-18 (火) 22:30:57