次に紹介するのは、毒と妖術の奇妙な結びつきを示す物語である。ハイチ島からアメリカ本国へ向けて、ヴードゥーの儀式に使われる人形が輸出されたことがあった。ところがこの人形を買った人は必らず毒にやられる。ジョージア州のアトランタでは、この人形に手をふれた五十人の学生たちが、妙な気分の悪さを感じた。人形が不幸をもたらすという信仰があるが、まさかそんな迷信を信ずるわけにもいくまい。というわけで、アメリカの保健省が不審に思って、調査に乗り出した。すると、この人形はカシュー(インド産まめ科の有毒植物)の樹で出来ていることが分った。 人形の頭には、カシューの油が染みこませてあって、毒性の蒸気が発散しているのだった。人形をいじってから四五十分もすると、もう皮膚が変色してくる。さらに人形の刳り抜かれた目の中には、子供一人ぐらい楽に殺せるほどの、アブリンという毒が入っていた。―この人形がアメリカ保健省の処置により、ただちに発売禁止になったのは、もちろんのことである。 |