第二次大戦中ナチスの宣伝大臣として悪魔のような活躍ぶりを示し、ベルリン陥落直前ヒトラーと運命を共にして自殺したパウル・ヨーゼフ・ゲッベルス博士には、美しい金髪の夫人があった。その名をマグダという。
権勢欲に憑かれたプチ・ブル出身のニヒリスト政治家と、大ブルジョワの家庭に生まれたロマンティックな気質の女性とは、一見、正反対の性格を示すかのように思われるだけに、あの悪夢のような動乱の一時期を背景とした、破滅に向って突き進む二人の男女の結びつきには、なにか運命的な、不吉なものの翳を認めないわけにはいかないのである。