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十六世紀の末葉、身分の高いハンガリアの貴族の家柄に生まれながら、自分の若さと美貌を保つために、六百人以上もの若い娘を殺して、その血のなかに浸ったという無残無類な女性があった。伯爵夫人エルゼベエト・バートリがそれである。フランス中世の幼児殺戮者ジル・ド・レエ侯にも比較される、この戦慄すべき女性の生涯は、従来ほとんど知られていなかったが、―ごく最近(一九六二年)、フランスの女流詩人ヴァランチーヌ・ペンローズが、その興味ぶかい伝記を書いたので、それによって以下に彼女の肖像を描き出してみたいと思う。