アドルフ・ヒトラーの著した書物の名。ナチズム研究の主要文献。ヒトラーは,1923年ミュンヘン一揆の失敗後5年の禁固刑を受け,バイエルン,レヒ河畔のランツベルク要塞拘置所に入ったが,所内で自由な生活を得てヘスらに口述・筆記させて完成(1924 年),9カ月で保釈され,第1部を1925年に,第2部を書き継いで1927年に出版した。その中で自己の行動を正当化,自党の政治プログラムを提示した。生い立ち・戦争・労働組合・教育など論及の分野は広いが,内容には歪曲・誇張が多いことが指摘される。基本のテーマは民族論にあり,人類を文化創造・支持・破壊民族の三つに分け,創造民族たるアーリア人種の優越を強調した。ドイツの現状への不満を否定的な訴えで表現し,反ユダヤ・反民主・反議会の見解が述べられる。大衆に対して〈演説は書物より影響が大きい〉と強調するこの書物は,ナチスの“聖典”と見なされるに至り,大量に出版された。 |